すべてはあの花のために④


「ていうか葵ちゃん、お前らに言わずに来たって言ってたんだけど」

「そんなこととは露知らず、オレに写真送りつけてきたのはトーマじゃん」


 あ。勝ち目ないわ、これ。


「でもま、トーマの写真を見なくても、うちのブレーンがあいつの居場所なんてわかってたけどな!」

「チカがなんで自信満々に言ってんのよ」

「まあ、そういうことだから。杜真、諦めろ」


 肩をぽんと叩いた、アキラの左耳に何もないことに気づく。続けて横目でトーマはカナデとアカネを見遣る。
 彼らの変化の裏に彼女の頑張りが見えて、つい顔が緩んだ。


「それで? おばさんが杜真のこと呼びに来たじゃない。『葵ちゃんが待ってるわよ』って語尾にハート付きで。……何してたのよ」


 ビビらせようとドスを効かせたようだが、すでに勝利しているオカマには特に苦手意識はない。


「そんなに気になるの?」


 だから、やり返すつもりでにやりと笑うと、まさかの予想だにしないところから伏兵が。


「どうせ告白でもしてたんじゃないの~?」


 どうしてそんなに自信満々なのか。楽しげに笑うキサには流石に、動揺を隠しきれない。加えて。


「あれ? でも杜真って、あたしのこと好きだったよね? 切り替え早いねー」


 拍車のかかったキサが、どんどんとバラしていく。


「ちょ、紀紗。流石にちょっとそれはどうかと――」

「あたしには逆うの」

「逆らいません」


 そしてもちろん、こいつに頭は上がらないわけで。


「じゃあ、言ってごらんなさいよ」

「告りました」


 離れに男たちの叫び声が上がったけど、こいつら忘れてんのかな。自分たちの存在がバレたら駄目だってこと。


「告ってどうなった。ええ?」


 なんだかキサの手に鞭が見えるなあと、お手上げしようとしたら、またまたまさかの伏兵が。