兄貴が騙されていたことがわかった警察は、兄貴を釈放した。
けれど、何の相談もせず勝手な行動をしたことで兄貴は氷川全体から責められた。
直接言われたわけじゃねえ。でもやりようはいくらでもある。
でも家に帰ると、あいつの母親は泣いて喜んだ。
氷川なんて関係ないってな。出会いは見合いだったかもしれないけど、あいつらはちゃんと愛し合っていたから。
母親は兄貴がしたことを、一度だって責めはしなかった。本当に、帰ってきてくれたことだけが、嬉しくてしょうがなかったんだ。
兄貴が家に帰ってきたのは、あいつが4つになった頃だった。いろんなことがあったから、取り敢えず落ち着いてから入園させることに、一旦話が落ち着いた。
……結局あいつが入園できたのは、6つになる年だったけどな。
まずは、兄貴が壊れはじめた。
のしかかる責任感と重圧、そして心ない言葉に、兄貴は耐えられなかった。
そして、逆に何も聞いてこなかった彼女のそばにいることさえ、耐えられなくなった。
しばらくして兄貴は、氷川との縁を切った。
氷川としては、それは大喜びだった。何でも、不良品を次期当主だとしても置いとくのは不安だったとか抜かしてたな。
それから兄貴は離婚しようとした。
でも彼女は、そんなのは関係ないって。ただ一緒にいるだけで幸せだからって、そう言ってた。
兄貴は、憑き物が落ちたような顔で笑ってたらしい。
だから、これでまた家族三人で暮らせるって。そう思っただろうよ。
でも次の日、兄貴は死んでた。



