すべてはあの花のために④


「……今日は満月みたいですよ」


 すっかり暗くなってしまった窓の外を眺めながら呟く。


「トーマさんのご都合がよければ、一緒にお月見しませんか?」


「季節外れですけどね」と小さく笑うと、少しだけ慌てたようにトーマに腕を掴まれる。


「トーマ、さん?」

「する。お月見。葵ちゃんとしたい」

「……はい。よかったです」

「そのあと俺と一緒に寝て?」

「それは絶対にしません」

「絶対襲わないから」

「そんなつもりがない人に限って結局のところ攻めに攻められるので、こっちとしては本当にもう懲り懲りなんですよ」

「え。どういうこと」

「そういうことは、恋人じゃない人とはしないってことです」

「いやいや。もう懲り懲りって……え。誰かに襲われかけたの?」

「……黙秘します」

「それ肯定だから!」


 その後散々トーマに文句を言われたけれど、慌てるトーマがおかしくて思わずクスリ。それが癪に障ったみたいで「お月見の時覚悟しといて」と、最終的に魔王様を降臨させてしまったのだった。