「トーマさん。わたし、決めつけないことにしたんです。最後まで諦めません。蕾のまま枯れるつもりはありません。だから、……咲かせてみせましょう! わたしの花を――」
空気をパッと明るく変えようと、花咲か爺さんが如く灰を蒔く体勢をしようとしたところで、トーマにぐっと引き寄せられた。そしてすぐ、小さな声で「……よかった。そう思えるようになって」と、そう聞こえてくる。
「葵ちゃん。……あおいちゃん」
トーマが名前を呼んでくれる。何度も。何度も。
君は、ここにいるよと。まだ、自分の腕の中にちゃんといるよと。
「……ありがとうございます。トーマさん」
全然放してくれないので、取り敢えず乗り換えまではこのままでいてあげることにした。
❀ ❀ ❀
「どういうこと!? 俺と一緒にお風呂入って、一緒にお布団入る計画どうしてくれるの!?」
「いや、知らないんですけど……」
そのあとバスを乗り換えて、トーマ家に泊まるつもりはないことを伝えると、叫び声を上げられた。変な計画を立てられていたことを事前に知れたのはよかったのかもしれないが。
だから葵は、本気で不屈の精神を鍛えるために来たことを伝えた。
「結局のところ、残り時間が増えるわけではないので」
「……そう、なんだね」
「はい。ですから、強くならないといけないんです」
みんなに、これ以上心配を掛けないように。
そして葵自身が、不安に押し潰されてしまわないように。
……心が、壊れてしまわないように。
「ただ待っているだけは、性に合いませんから」
「じゃあ俺とのラブラブ計画は白紙に戻るんだね」
「端からラブラブするつもりはありませんでしたけど……でも遅くなってしまったので、今日だけ。もしよければ泊めていただけますか?」
するとトーマは、「そんなのお安いご用だよ」と嬉しそうに笑った。



