「『蕾のまま枯れる』っていうのは『大人になれないまま消える』ってことかなと。『ある病』って言う割には曖昧過ぎて、病院に行けば治るような、そんな単純なものじゃないってことはすぐにわかった。だから、時間がないから『またね』って約束を、葵ちゃんはするのが怖いのかなって」
それが、彼らから話を聞いた彼なりの推測。「どうかな? ちょっとは当たってる?」と、彼は悲しそうに笑っていた。
だから、そこまで知っているならと、葵は笑顔で答えた。
「本当は、行こうと思えばどこにでも行けたんです」
「葵ちゃん……」
「でもわたしは、トーマさんに会いたかったから、ここまで来たんですよ」
理事長の言葉を借りるなら――枯れる前に、伝えておかなければならないことがあったから。
「キク先生がおっしゃっていたように、自分を可哀想だとは思っていないですけど」
葵は、そのまま理事長の言葉を借りながら、自分の未来を絵本の物語のように話した。自分の両手を蕾に見立てて、両手をぎゅっと握る。
「わたしは、自分の花を閉ざしていました。残された時間を、知っていたから」
それでも、幸せだった。
まさか、最後の最後で友達ができるとは思ってもみなかったから。
だから、その残り少ない時間を大好きな友達のために使おうと決めた。幸せをくれた友達に、自分のありったけの幸せを分けてあげようと。
「そんなわたしにね、お月様が教えてくれたんです」
『あなたの幸せをもらっても、お友達は幸せにはなりませんよ』『そんな風に時間を使うのではなく、自分の花を咲かせられるよう努力してみては』と。
お月様のおかげで、気持ちは軽くなった。
でも、勝手に決めつけていた。どうせもう、これ以上の幸せは訪れないと。
お月様の言葉を、鵜呑みにはできなかった。
「でも、新しくお友達になってくれた小さくてかわいいお花が、教えてくれました」
『自分が幸せになれないと思っていたら、一生幸せにはなれないよ』『自分は幸せになれると思わないと、なれないんだよ』って。



