あいつの母親は、ミノルんとこの母親と姉妹。俺の兄貴と出会ったのは、普通の見合いの場。
昔は氷川も、海棠と並ぶくらいの地位は持ってた。それで、ミノルの母親の妹が嫁に来た。
俺の兄貴も、彼女を気に入ってた。向こうもそうだな。多分、結構意気投合してたんだよ。
……は? 俺も言うのか? 俺は写真を見た時から一目惚れだ。悪ぃかよ。
それからは普通に結婚して、楽しそうに暮らしてた。二人とも幸せそうな顔してた。
何年かして、待望の赤ん坊が産まれた。それがオウだ。
あいつは、氷川をこれから背負っていくんだと思ってたんだけど……まあそれは後でいいな。
あいつらは毎日幸せそうにしてた。
事が起こったのは、あいつが幼稚園に通う年。オウがまだ3つだった時だ。
――兄貴が、逮捕された。
全員が何かの間違いだと思ったよ。兄貴はそんなことをするような奴じゃないからな。
でも家宅捜索が入って、一気に幸せだった家庭がぶち壊された。母親も、あいつを心配して俺に一旦預けたこともある。
その頃母親は、兄貴のことで毎日警察たちと話をしていた。話を聞いてた。
頑張ってた。毎日一生懸命、兄貴の話をしていたよ。
なんで兄貴は犯罪を犯してしまったのか――どうやら俺の知らないところで、氷川自体が傾きかけていたそうだ。それで、金のなる話についつい食いついちまったんだ。
兄貴は責任感が強い奴だった。
『一人で氷川を背負わないといけない』
『自分の代で氷川を終わらすわけにはいかない』
そんな兄貴の心情を知ってか知らずか、密売の話を持ち込んだ奴がいる。もちろん兄貴には、そのことを言わずにな。
兄貴は騙されていたんだ。
『氷川』の名前を使われたんだよ。
それでも兄貴にその話をした奴が捕まらなかったから、それからしばらくは膠着状態。結構長く続いた。



