すべてはあの花のために③


「(地味に悔しいんだけど、ヒナタくんの特技見れなかったの。後でキサちゃんにでも聞いてみよ)」


 そんなキサには、擦れ違った時に「どこ行ってたんだー!」と怒られたけれど「すぐそこにいたよ~」と手を振って返しておいた。


『それでは、特技の披露をお願いします!』


「はいっ!」と勢いよく返事をした後、集中して目の前にあるものを見つめた葵は、軽く手刀を当てて狙いを定める。


「はああああッ‼︎」

 パリンッと亀裂が入ると、それは一気にガラガラ崩れて落ちていく。葵は、目の前に積まれた100枚の瓦を叩き割った。


『こっ、これはすごい! 見事に一番下の瓦まで真っ二つに割れています! 先程の可愛らしさから一転! こんな格好いい一面があるとは驚きです!』


「ふう……ありがとうございましたっ!」


 一礼して瓦を片付けていたら、「とっても格好よかったです!」と先程の彼が。どうやら彼も、葵と似たようなことをしようとするのか道着に着替えていた。

 葵は“仮面”を着けたまま感謝を告げると、彼は満足そうにニコッと笑う。


「それじゃあ俺も、あなたに格好いいとこ見せないとっ」

「それでは、裏で応援してますね」


 在り来たり言葉に「よしっ。頑張るぞー!」とやる気満々に準備体操をし始める彼は、やはり格好いいというよりは可愛らしかった。


『それでは、エントリーNo.15の男性の方、披露をお願いします!』


 そうして彼が披露したのは空手の型。
 一度ゆっくりと礼をした後、彼は軽く息を吸って吐いた。


「――はあッ」


 会場には彼の動きに魅了された人でいっぱいだった。緩急のある動きや、声を張り上げながら腕や足を突き出したり。彼の突き出した勢いがすごく早いのか、会場が静まりかえっているせいなのか。会場は彼の音しかしない。
 先程までの可愛い表情とは一転。鋭い目つきには、勇ましさしかない。

 演技が終わり、彼は深々と礼をした時、会場中は大きな拍手で包まれた。


『……あ、ありがとうございましたー! 彼も先程の甘い雰囲気とは打って変わり、とても勇ましい雰囲気に包まれていました!』


 会場はしばらく、彼の余韻に浸っていた。