その次のカナデはてっきり書道でも披露するのかと思ったのだが、「歌いま~す」と、軽口を叩いて歌い始めた。
歌い出しからなかなかの歌唱力。きっと今まで、その歌声で何人もの女の子を虜にしたのだろう。しかし、切ないバラードを感情たっぷりに歌うカナデは、まるで違う人を見ているよう。
けれど会場の女の子はもう彼の虜になってしまったのだろう。ハンカチで目元を押さえながら泣いていたり、目をハートにしていたりした。
しかし男性陣の受けはよくないらしく、すごい形相で睨まれている。何故彼はこうも男性を敵にまわしてしまうのか。まあ、決定的に彼が悪いのだけれど。
「よしっ! じゃああっちゃん。行ってくるね~」
「うん! 行ってらっしゃい」
手を振りながら、キサがステージの上へと上がっていった。
「(ネイルセット持って行ったから、多分それを披露するんだろう)」
「――道明寺さん」
ステージの様子がよく見えるよう移動しようと思ったところで、少し強めの声で女の子たちに声を掛けられた。
「(お。なんだ? もしかしてこれが、女子特有のイジメってやつ?)」
そんなことを思いながらも、「何でしょうか」と冷静に答える。
「ちょっと、こちらへ来てもらっても宜しいかしら」
「わたし、すぐに順番が回ってくるのですけど……」
「すぐに終わりますわ。ほんの少しだけ、お時間を戴ければ」
まあ仕方がない。葵はステージ裏の隅っこの方へ連れて行かれた。
「それで、わたしに何の用事があるんでしょう」
少し身構えながら、目の前の六人ぐらいの女子にそう問いかける。すると彼女たちは、ガシッと葵の肩を掴んできて――。
「さっきの方とは恋人同士なんですの!?」
必死の形相でそう尋ねてきた。
「……さっき、初めてお会いしたばかりですが……」
「本当ですかっ?」
「あ、はい。恋人でも知り合いでもありません。初対面です」
「そっ、そうなんですのね! それはよかったですわ~」
先程葵と一緒に歩いた彼を、どうやら葵の本当の恋人だと勘違いしたらしい。テーマが【Christmas Date】だったとはいえ、そこまでのアピールをした覚えはないのだが。
「(遠目に見ただけで惚れてしまうなんて。これも彼の実力ということか)」
何とも思っていなかった葵は、彼にも、そして目の前の彼女たちにも感心してしまった。
「皆様の行く末に、幸が多いことを祈っています」
そう言い残し、自分の番が来た葵はステージへと向かった。



