すべてはあの花のために③


 照れ度マックスでロボット化した二人は、指を絡ませてアリーナの中心へ。時々体がぶつかって、「ご、ごめんなさいっ」と誤り合っていた。その後少し気まずくなってお互い視線を外すけど、様子を窺うようにちらりと横目で見てたり、目が合ったら慌てて視線を外したり。
 お互いそわそわしながら、それでもなんとか中心まで行くことができた。


「あ。そういえば、どうして写真では髪を下ろされていたんですか?」

「ぎゃっ!? ……ギャップ、を。狙おうかと思いまして……」
 

 小声で首を傾げながら上目遣いで尋ねると、顔を真っ赤にした彼は、慌てて葵の目を塞ぐように片手を翳しながら教えてくれる。
 自分と同じことを考えている人がいたんだなと凝視しながら感動していると、彼は両手で自分の顔を隠してしまった。仕草がとっても可愛いらしかった。

 そんな彼に、葵はにこっと笑って自分のスヌードを外す。


「ふふっ。あなたがペアでよかったです」


 自分のスヌードを彼の頭の上からズボッと入れて巻いてあげた。「わあ!」と初めは驚いていた彼も「じゃ、じゃあ……」と、自分の帽子を取って葵の頭に優しく被せてくれた。


「俺も……その。あなたとペアで、よかった、デス」


 顔を真っ赤にしながらも、はにかんだ笑顔。
 そして彼は、葵に被せたニット帽ごとそっと葵を引き寄せて、おでこをこつんと合わせてくる。


「――……!」

「あ。ご、ごめんっ。体が勝手に……」


 初々しい本物のカップルのような二人は、またお互いの体温を分け合うように指を絡ませて、今度は体が当たってもお互い照れた笑顔になりながら、ステージへと戻ってきた。
 すっと離れた手に、少しだけ寂しさを感じながら「ありがとうございました」とお礼を伝えると、彼は一瞬だけ目を見張る。


「うん。こちらこそ、ありがとうございました。ドレス姿も楽しみにしてるね?」


 けれどすぐにはにかんだ表情で笑って、反対側のステージ裏へ戻っていった。