『こ、これはなんということでしょう! 取り敢えず女性の方からいきましょう! 彼女のコーディネートは、真っ白のニットに、ワインと紺のチェック柄のサスペンダー付きのタイトスカートで、いつもの清楚な彼女のイメージから一転とても可愛らしい印象です! ベージュのチェスターコートにロングブーツを合わせ、黒いスヌードで可愛らしさの中に大人な彼女が見え隠れしています!』
葵のコーディネートは可愛らしいばかりではなく、きちんと大人らしさを入れてまとめてきていた。そして、問題は――――。
『み、みなさん! もう一度お手元の写真と今の彼を見比べてください! 別人のような様変わりに、私も動揺が隠せません!』
ステージに上がった葵も、驚いて言葉が出てこなかった。
『な、なんということでしょうか! 男版シンデレラというべきでしょうか! 王子です! 大変身です! 彼はもう、完璧な王子様になってこのステージに現れましたあああーッ!』
そんな実況が行われる中、葵が待っているステージの真ん中へ王子が少し照れながら歩いてくる。王子と呼ばれた少し可愛らしさの残る彼は、ほっぺたをポリポリ掻きながら葵の元へとやってきた。
『だ、男性の方のコーディネートは、ベージュのダッフルコートに、ブラックのチノパンを合わせ、中にVネックのニットを着て、グレーのニット帽を被っています! で、でも何故でしょう。きっと皆様も同じなのではないでしょうか! ちらりと見える白い首筋から溢れんばかりのエロさと、その甘いマスク! 何故写真では前髪を下ろしていたんですかあー!』
実況の人にも力が入る。観客の中には、彼から溢れるその甘い空気に酔いしれている人が大勢いた。
「お、俺、そんなに写真写り、悪いかな」
ここまで叫ばれると思っていなかったのか、彼は戸惑いながら葵に尋ねてくる。
「いいえ。そんなことないですけれど、今の方がとっても格好いいと思いますよ」
葵が笑顔でそう言うと、目の前の彼は一瞬真っ黒な瞳を見開いてから、顔を真っ赤にしてしまった。
「そ、そう言う君も、とっても可愛いと……思いマス」
真っ赤に照れた顔を隠そうと、腕を口元に持っていく彼に、思わず葵も恥ずかしくなって顔が赤くなる。
「あ。ありがとう。ござい……マス」
ステージの真ん中で何やってるんだか。
お互いがお互いを褒めながら照れていた。
「と、取り敢えずっ。向こうまで、行きマス、カ?」
葵は、ゆっくり手を前に出す。
「う、うん。……よろしく、お願いしマス」
彼もゆっくり手を伸ばしてきて、指を絡ませるようにして繋ぐ。
「――!」
「あ……れ? だめ、だったかな。デートだから、いいかと思って……」
何これ。端から見たらもう、完全に初々しいカップルじゃない。
「だ、だめじゃ……ないデス」
「そ、そうデスカ。ソレハ、ヨカッタ」



