『続きまして、エントリーNo.13の方、どうぞ~』
「はあ。行ってくるわ」
「い、行ってらっしゃい、ツバサくん」
ツバサは肩を落としていたが、ステージに上がると背筋がすっと伸びる。モデルと言われてもおかしくないほど、ウォーキングも素晴らしい。
『はい、えーっと。こ、こちらの方は……シンプルなデザインの首元が大きく開いたネービーのVネックにスキニーデニムがばっちり決まっております! 色っぽいです!(よかった。スカートじゃなくて)そして、手に持っている赤色のハンドバッグがじょ、……女性らしさとクリスマス感を演出しています!』
実況の人は、なんとか『女』という単語を出すまいとしていたが、結局出してしまってすごく悔しそうだ。
『続いて男性の方! 彼の方はベージュのショート丈のモッズコートの前を全て閉め、暗めの……これはグリーンでしょうか。そのパンツで合わせてきています。端から見ると、一見地味な感じがしますが、彼の髪色にもとても合っていると思います! 彼氏はシンプルにして、彼女を引き立ててあげるようなイメージでしょうか!』
全くもってその通りだと思います。彼だしね。女の子優先だよ、絶対。
ステージの真ん中に来た二人は、若干顔が引き攣っていた。仕方がない。だって男同士だから。
知らない人と、そっち系が好きな人にとっては、涎が出るほど嬉しいだろうけどね。
彼らは吹っ切っているのか、カナデが腕を出し、それにツバサが腕を絡ませてランウェイを歩いて行く。中心まで行った彼らは、なんだかイチャついているように見える。
ツバサがカナデのほっぺをツンツンしたり、カナデがツバサの耳を摘まんだりしているが。
「ちょっと、俺より背の高い彼女なんてお断りなんだけど」
「そんなこと言って、あんたはただあの子と一緒に歩きたかっただけなんでしょ。ええ? どうなのよ。ほんとのこと言ってみなさいよ」
実際はそんな会話をしているに違いない。
それから同じように彼らも腕を組んで帰ってきて、ツバサもステージ横に戻ってきた。
「もうっ。まだ知らない人の方がよかったわ!」
確かにやりにくいでしょうね。
でも、それは向こうも一緒だから。



