すべてはあの花のために③


「可愛い」

「――!? さ、左様でございますか……」

「今日このままデートに行こう」

「ぅえっ!?」

「ダメか?」

「「ストーップ!」」


 押せ押せモードのアキラと、小首を傾げてくる可愛さに戸惑う葵の間に、九条兄弟が割って入ってくれる。


「(た、助かった。危うく了承するとこだった)」

「む。邪魔するな」


 そんな葵とアキラを余所に、ツバサとヒナタはご機嫌斜め。


「アキ。今そんなことしてる場合じゃないでしょ」

「そうだよアキくん。今は集中」

「わかっている。でも、葵が可愛いのが悪い」

「!?」


 そんなことを言うもんだからまた葵の顔が赤くなってしまって、二人の機嫌も悪化。
 というのも、予想以上にコンテスト参加者のレベルが高かったのだ。


「これじゃあアタシが優勝するのもちょっと厳しいじゃないのよ」

「それだけはやめた方がいいと思うよ」

「参加者全員が泣く」

「確かに」


 ツバサがミス側に出ることは事前に許可を得ている。理事長の影響からか、企画した方もきっと面白がったに違いない。
 しかし、それとは別に余裕がないのにはもう一つ理由がある。大会に支障があってはならないと、今まで持っていた無線を企画者の人に外されてしまったのだ。


「(確かに不安だ。でも――)」


 会場には彼がいてくれている。
 自分が見られない分、しっかり辺りを見ていてくれるだろう。


「それじゃ、行ってくる」


 アキラがステージに上がる。生徒会メンバーの中ではトップバッターだ。