「……そ。お前片付け方下手すぎだし。新聞紙にも包まずにそのままビニール張ったゴミ箱入れるか? 普通」
「ご、ごめん! 後でしようと思ったけど、参加者の人たちが気になってて……」
誰だそんなことした奴……! と恨めしく思いながらそう返すと、彼は大きなため息をついた。
「それに残った飲み物ぶちまけたままだったしよ。お前どんだけ焦ってたんだよ」
「だ、だって参加者の人が――」
最後まで言えないまま、伸びてきたチカゼの片腕に抱き締められる。
「――! ちかくん?」
「はいオレの勝ちー。何かあったな。バレバレだクソが」
そう言われて体がぴくっと揺れてしまった。彼に抱き留められているので、直に彼にも伝わってしまっただろう。
「新聞紙にも包んであった。それはそれは丁寧にな。それにオレは全部飲みきってなかったのに、生徒会室の床はどこも汚れてやいなかった。……それとお前が急に、ミスコンに出たいって言い出したことが関係があるんじゃないかって聞いてんだバカ」
「チカくんほどではない」
「罠にまんまとはまったお前が悪い」
小さく舌打ちすると、チカゼは葵の頬に両手を持ってきてびろ~んと引っ張った。
「舌打ちしたのはこの口か? ええ?」
「いひゃいれひゅ。はらひれふらひゃい」
(訳:痛いです。離してください)
「お。訳とか久し振りだな。お前が変態マンになって以来」
「ほんなのになっはおほえははい!」
(訳:そんなのになった覚えはない!)
「それはさておいてだ」と、パッと手を離したチカゼは、無線を手に取る。
「……あ。オレ、チカだけど。そっちの準備は順調? ……ああ、そうなんだよ。やっぱりこっち、なんかあるみてえ。……おう、わかった。こっちは任せろ。悪ぃけどそっち頼むな」
チカゼは「というわけだ」って言ってきた。
「……中止に、させる気?」
「そんな大層なことできるわけねえだろ。ただ、お前は安心して行ってこいって話」
「なんで? そこまでわかったんならやめさせればいいじゃん。大会自体じゃなくてもわたしを」
「これに出ないといけねえんだろ。だから、オレがちゃんと気張っててやるって言ってんだ」
……と、いうことは。



