門の前では右と左に分かれて、来た人にパンフレットを配っている。葵の隣にはアカネがいてくれていた。
桜の文化祭はクオリティーが高いと評判で、地域の人も他校の生徒もたくさん入ってくる。しかし始めの一時間で結構入ったようで、入場人数は落ち着いていた。
「あおいチャン、何ともない?」
アカネも葵の心配をしてくれた。
「うん。今のところは何ともないよ。もしかして昨日、ツバサくんから何か聞いたかな?」
敢えて目線を正面へ向けたまま尋ねてみたけれど、視界の端でアカネがビクッとなったのがばっちり見えて、思わず笑う。
「アカネくんって、嘘つけないよね」
「気づくあおいチャンもすごいと思うんだけど」
話を聞くに、講堂の奈落に閉じ込められていたことと、そこまで葵が助けに来てくれたことしか聞いていないようだ。
「だから今日は何もないんじゃないかなって。つい羽目を外しちゃった」
「あおいチャン、楽し?」
「うんっ。これ以上ないほど楽しんでるよ! 今日一日でどれだけ思い出できるかな~?」
それから、みんなして注意深く意識して入ってくる一般客を見ていたが、嫌な視線を放ってくるような人は入ってこなかった。
「(なら、もう校内の中に……)」
時間が12時になったのを見計らい、葵たちは校内へと戻ることに。葵はミスコンのため体育館へ、他の三人は講堂へ行くのだが。
「ちょっとこいつ体育館まで送ってくる。少しの間頼む」
チカゼは返事も聞かず、さっさと葵の手を取ってズンズンと進んで行く。振り返った二人は、最初こそ目を点にしていたれけど、すぐににっこり笑って手を振ってくれた。
「(頑張ってくるからね~。わたしの癒やしたちぃ~……)」
葵も泣いてるのか笑ってるのか、変な顔をしながら手を振っておいた。
「(へ、変とは何だ!)」
((そのままノ意味))
「(最近突っ込みも雑だから!)」
((いいから、さっさとイケ))
「(ええー何でそんなに機嫌悪いのか。わかったよう……)」
葵はチカゼに連れられて、体育館へと向かっていった。



