すべてはあの花のために③


 門に行くと、何故か人だかりができていた。右側には女子、左側には男子。……取り敢えず、男子がたくさんいる方に行ってみることに。


「き、キサちゃ~ん? 生きてる~?」


 と言いつつももう一人予想しているが、群がっている彼らのプライドがズタズタになっちゃいけないから、気を遣ってキサの名前だけ出す。


「あっちゃ~ん。へるぷみ~」

「ちょっと! 来るの遅いわよ!」


 やっぱりおられましたか、ツバサ様。


「何言ってるんですか。時間ぴったりですよ」

「そんなのわかってるわよ。でも空気読んで、あとお得意の予想して早く来て欲しかったのよ」


 無茶言わないで。


「と、取り敢えず交代しましょうか」


 群がっていた男性陣は、今度は葵に目を向け「お美しいですね!」「彼氏はいますか⁉︎」「連絡先を交換し――」みたいなことを言っていたけれど、やっぱり最後の方は聞き流した。


「あ、そうだ。……あたしたち三人、13時から体育館で行われる、ミスコンに参加するんです。よかったら見に来て、あたしたちに投票してくださいね!」


 わざわざ戻ってきて何を言うのかと思ったら、群がっている彼らの方へ、紀紗はウインクを投げ飛ばす。そして彼らのハートをいとも簡単に射止め、男性たちはハラハラハラ……と、その場にへたり込んでしまった。


「(キサちゃんは小悪魔気質もあるのか。よく覚えておこう)」


 そうしていると、向こう側も……恐らくカナデがキサみたいなことを言ったのだろう。群がっていた女子たちが目をハートにしてそこら中に倒れ込んだ。


「(だ、大丈夫かな。顔赤い人たちいるけど……)」


 流石にこの時期で熱中症はないかと、真剣に心配してしまう葵である。


「それで? アンタ、今のところ嫌な感じはしないの」


 ツバサが、昨日のことを心配しながら聞いてくる。


「うん。もしかしたら昨日ので終わりかもしれないけど、ツバサくんも用心しといてね」

「他人の心配より、自分の心配しなさい。取り敢えず、気になった男たちはいなかったと思うわ。これから入ってくるかもしれないから気をつけておきなさい」

「わかった。ありがとう」


 彼は、葵の頭にぽんと手を置いてきて、前半組のみんなと校内へ戻っていった。