門に行くと、何故か人だかりができていた。右側には女子、左側には男子。……取り敢えず、男子がたくさんいる方に行ってみることに。
「き、キサちゃ~ん? 生きてる~?」
と言いつつももう一人予想しているが、群がっている彼らのプライドがズタズタになっちゃいけないから、気を遣ってキサの名前だけ出す。
「あっちゃ~ん。へるぷみ~」
「ちょっと! 来るの遅いわよ!」
やっぱりおられましたか、ツバサ様。
「何言ってるんですか。時間ぴったりですよ」
「そんなのわかってるわよ。でも空気読んで、あとお得意の予想して早く来て欲しかったのよ」
無茶言わないで。
「と、取り敢えず交代しましょうか」
群がっていた男性陣は、今度は葵に目を向け「お美しいですね!」「彼氏はいますか⁉︎」「連絡先を交換し――」みたいなことを言っていたけれど、やっぱり最後の方は聞き流した。
「あ、そうだ。……あたしたち三人、13時から体育館で行われる、ミスコンに参加するんです。よかったら見に来て、あたしたちに投票してくださいね!」
わざわざ戻ってきて何を言うのかと思ったら、群がっている彼らの方へ、紀紗はウインクを投げ飛ばす。そして彼らのハートをいとも簡単に射止め、男性たちはハラハラハラ……と、その場にへたり込んでしまった。
「(キサちゃんは小悪魔気質もあるのか。よく覚えておこう)」
そうしていると、向こう側も……恐らくカナデがキサみたいなことを言ったのだろう。群がっていた女子たちが目をハートにしてそこら中に倒れ込んだ。
「(だ、大丈夫かな。顔赤い人たちいるけど……)」
流石にこの時期で熱中症はないかと、真剣に心配してしまう葵である。
「それで? アンタ、今のところ嫌な感じはしないの」
ツバサが、昨日のことを心配しながら聞いてくる。
「うん。もしかしたら昨日ので終わりかもしれないけど、ツバサくんも用心しといてね」
「他人の心配より、自分の心配しなさい。取り敢えず、気になった男たちはいなかったと思うわ。これから入ってくるかもしれないから気をつけておきなさい」
「わかった。ありがとう」
彼は、葵の頭にぽんと手を置いてきて、前半組のみんなと校内へ戻っていった。



