すべてはあの花のために③


 2-Bは迷路のお化け屋敷。武道場を貸し切っていて、なかなかに規模が大きい。


「四人一気に入れますか?」

「「「え?!」」」


 本当は不可だけど、あまりにも三人が怖がっていたので特例でOKに。入ってみるとかなり真っ暗で、足下にろうそくタイプ電気が並べてあるだけ。本当に、何かが出そうな雰囲気があった。

 葵の左腕には、ガクぶると震えているオウリ。


「(……やっぱり持って帰りたい……)」


 最近彼のお持ち帰りを本気で考え始めた葵である。

 右腕には、脅かし役の人が出てくる度「うわあ!」と見本のように驚くアカネ。


「アカネくん、そんな驚かなくてもだいじょ――「わりぃごはいねぇが~」

「わわわああー!」


 いやなまはげさんだし。

 そして、葵の背中の服をガッチリと持って、頭も背中に預けているチカゼ。


「ごめんなさいこんにちはおはようございますさようなら今日はいい天気ですね。あはは……」


 永遠と挨拶をぶつぶつ唱えていて、どちらかというとこっちの方が怖かったりする葵である。

 そして目の前に『出口』という文字が見えた瞬間、葵以外の三人は猛ダッシュで走って行った。


「そんなに怖がることなかったけどなあ」


 葵は大したことなかったお化け屋敷に少しがっかりしつつ、出口に向かうと。


『……ソノ首、モラッタ』

「――⁉︎」


 後ろから聞こえた謎の機械音――ゆっくり後ろを向くと、死神の大きな鎌が葵の首元に当てられた。
 もうダメかと、葵は目を見開いたまま固まった。しかし死神は、そこから鎌を動かそうとはしない。

 そしてその死神は、そのまま鎌を下ろして闇に消えていく。


『……オマエハマダ、狩ルニハ早イ……』


 ……そんな、言葉を残して。

 あまりにも出てくるのが遅かったので三人が頑張って出口から覗いてくれた。

「最後、死神の恰好をした人がいるんですね! 驚きました!」と、感想を係の人に伝えたら「え? そんな脅かし役は、いないんですけど……」と返ってきて。


「ぎゃあああああー‼︎」


 今度は葵が叫ぶ番だった。

 実のところ、葵みたいに怖がらずに出てきた人たちには、死神サービスがあるみたい。


「(な、何。死神サービスって……)」