すべてはあの花のために③


 その花はかぜさんに大きな木のところまで
 連れて行ってもらいました


 大きな木さん?
 どうかわたしを
 あの美しい生き物にしていただけませんか?

 わたしはあの美しい生き物に
 恋い焦がれてしまったのです


 大きな木は言います


 そうか
 それならば

 たくさんの花から
 蜜をもらいなさい

 それでもよかったら
 その蜜で

 君をその生き物に変えてあげよう


 花はうなずきます

 そして花は
 たくさんの花たちから
 蜜を少しずつもらいました


 するとどうでしょう
 たくさんの花たちが
 枯れていってしまうではありませんか


 それから花は
 蜜とひきかえに
 美しい生き物の姿を手に入れます


 大きな木は言いました


 君は
 たくさんの花たちを
 枯らしてしまったんだ

 これは大罪だよ

 そんな愚かな君のために蜜をくれた
 たくさんの花たちのためにも

 その生き物と幸せになるんだよ


 はじめて会った大きな木は
 とってもきれいで澄んでいたのに
 今はとっても恐ろしく見えました