〈マタ明日ネ?〉
「――ッ!」
気持ち悪い内容に、葵は迷わずスマホを自分のポケットに隠した。
見てない。見てない。見てない。
何でもない。何でもない。何でもない。
気のせい。気のせい。気のせい。
そんなことを考えながら、葵は今のことをなかったことに、した。……いや、したかった。
「アオイちゃん? どうしたの」
急に撫でるのをやめたせいだろう。カナデが起き上がってそんなことを聞いてくる。
「え。どうしたの。体調、悪い?」
葵の顔があまりにも真っ青になっていたので、カナデは取り敢えず寝かせようと思って腕を引く。
「あ。……ううん。全然大丈夫だよ? それよりも、さ? もうすぐみんな帰ってくるころだから、みんながいるところに――」
戻ろうと、そう言おうと思ったら、強く抱き締められてしまった。
「かなで、くん?」
「スマホ見てた」
「…………」
「嫌なこと、あったの」
「うーんまあ、そんな感じかな」
「家のこと?」
葵はそう言われて驚いた。何故彼も知っているのだろう。
「アオイちゃんが、送り迎え頼めないんだって言ってたって聞いたから」
「……そっか」
きっと、あの三人の誰かが言ったんだろうな。彼が知っているということは、駒扱いされてることも恐らくみんなが知っているんだろう。
「うーん。そうなんだよー。いろいろあってねー」
「何かあったら、言ってね」
カナデがおでこに、こつんと自分のそれを当てながら言ってくる。
「うん! ありがとー!」
そう言って二人は抱き合っていると、どこからともなく――カシャッと小さなシャッター音が。葵とカナデはその音に驚いて、仮眠室の入り口を見た。



