すべてはあの花のために③


〈マタ明日ネ?〉

「――ッ!」


 気持ち悪い内容に、葵は迷わずスマホを自分のポケットに隠した。

 見てない。見てない。見てない。
 何でもない。何でもない。何でもない。
 気のせい。気のせい。気のせい。

 そんなことを考えながら、葵は今のことをなかったことに、した。……いや、したかった。


「アオイちゃん? どうしたの」


 急に撫でるのをやめたせいだろう。カナデが起き上がってそんなことを聞いてくる。


「え。どうしたの。体調、悪い?」


 葵の顔があまりにも真っ青になっていたので、カナデは取り敢えず寝かせようと思って腕を引く。


「あ。……ううん。全然大丈夫だよ? それよりも、さ? もうすぐみんな帰ってくるころだから、みんながいるところに――」


 戻ろうと、そう言おうと思ったら、強く抱き締められてしまった。


「かなで、くん?」

「スマホ見てた」

「…………」

「嫌なこと、あったの」

「うーんまあ、そんな感じかな」

()のこと?」


 葵はそう言われて驚いた。何故彼も知っているのだろう。


「アオイちゃんが、送り迎え頼めないんだって言ってたって聞いたから」

「……そっか」


 きっと、あの三人の誰かが言ったんだろうな。彼が知っているということは、駒扱いされてることも恐らくみんなが知っているんだろう。


「うーん。そうなんだよー。いろいろあってねー」

「何かあったら、言ってね」


 カナデがおでこに、こつんと自分のそれを当てながら言ってくる。


「うん! ありがとー!」


 そう言って二人は抱き合っていると、どこからともなく――カシャッと小さなシャッター音が。葵とカナデはその音に驚いて、仮眠室の入り口を見た。