すべてはあの花のために③


 緩められた手を、今度は葵が両手で包み込んであげる。何なら笑顔もつけてあげようじゃないか。


「だから、カナデくんにちゃんと見ててもらえて、わたしは嬉しかったんだけどな? どうしてそんなに怒っちゃったのかな? 悲しんじゃったのかな?」

「……! ……~~っ。ちょ、今。こっち見ないでっ!」


 ありゃま。さっきまで殴っていた枕に顔を埋めちゃったよ。


「(君も可愛い部類に昇格だわ)」


 葵はそう思いながらカナデの頭を、よしよしと撫でてあげた。


「……あおい、ちゃん……」


 枕に顔を埋めたまま言っているので、よく聞こえないけど。


「ん? なーに?」

「おこって、ごめん」

「全然いいよー。でも、何でわたしはカナデくんを怒らせてしまったのだろうか」

「そ、れは……俺の勝手な思い違いだったので、深くは聞かないでください」

「はーい。じゃあ、悲しそうだったのも?」

「そういうことです」


 そうですかそうですか。じゃあ、気にしないでおきましょうかね。
 そうしていると、葵のスマホに通知が届く。


「(ん? メール?)」


 葵は撫でている手は止めず、もう片方の手でそれを取り出す。


「(……え)」


 そこには、知らないアドレスから、こんなことが書かれていた。