「(俺も、アオイちゃんと旅行行きたいっ!)」
そんなことを考えながら、ベッドの上の枕に拳を打ち込んでいるカナデ。
「いやいやカナデくん、枕に穴が空いちゃうよ」
ちょうどその時、葵が仮眠室に入ってきた。
「え⁉︎ アオイちゃん?!」
「何をそんなに悔しがってるんだー?」
葵はカナデが座っているベッドに腰をかける。
「……だって、俺もアオイちゃんと旅行行きたいんだもん」
そう言いながら、しゅんとなるカナデ。
――なんということだろう! 何故か生えた、彼の犬の耳と尻尾が元気がなくなってるように見えるではないか!
「(大きなワンコがしょんぼりしている)」
ついつい撫でたくなった葵は、彼の俯いた頭をやわらかく撫でてあげた。初めは驚いたカナデも、気持ちいいのか目元と口元が嬉しそう。
「カナデくん? わたしたちはやっぱりカナデくんとも一緒に旅行行きたいからさ、まだ使わないことにしたんだー」
「え?」
葵がそう言うと、カナデは葵の撫でていた手を取って聞き返してくる。
「どういうこと」
「ん? またいつか、一緒に行けたらいいなと思って。そんな願望が入ってる!」
「一生来ないよ、そんなの」
「そっか。まあ、その時はその時だ」
葵がにかっと笑ってそう言うと、カナデは苦笑いをしながら「ありがと」と零した。



