「その二人から、いい匂いがしたのよね」
「ツバサくん。匂いフェチだったのか」
「そうじゃないわよ。……なんかいい匂いがした気がして。そこまではそんな感じだった気がするって思い出せるんだけど……もう記憶はないわね。なんでかしら」
「(何かを嗅がされたのか。でも、無理矢理ってわけじゃないって言ってたからな)でも、何はともあれ、無事でよかったね?」
「ええ。もうこれ以上のことがないことを祈ってるわ。みんなにも。もちろんアンタにも」
そう言ってツバサは、ぽんとやさしく葵の頭に手を置いてくる。
「(……ごめん、ツバサくん)」
これは、あの男との約束だ。出なかったらみんなに、何かされてしまうかもしれない。
「(自分に何があったとしても、みんなを守る)」
今日は、恐らくもうないだろう。次に彼らが仕掛けてくるのは――ミスコンだ。
生徒会室に戻ると、当番を終えたアキラ、アカネとチカゼがいた。チカゼは本当に悪かったと思っているらしく、葵が帰ってきて謝ったら代わろうと思ったらしい。なので、もう少しカナデが当番をしているみたい。
「……その。ごめん。いきなり大きい声出しちまって」
「ううん。わたしも、怒らせるようなこと言ってごめんね?」
チカゼと葵がそんな話をしている中、アキラとアカネは、ツバサに話しかける。
「それで、本当は何があったんだ」
「つばさクン、何があったの」
ツバサは、葵との約束だったので言わないでおこうと思っていたが。
「(そうか。この二人なら、少し話してもいいかもしれないわ)」
味方は多い方がいい。全ては話せないが、彼らはもう、シントから話を聞いている。
ツバサは二人だけに聞こえるように小さな声で、ぼそりと話す。



