「――……ッ」
アキラに連絡を取ろうと思ったが、なるべく事を大きくしたくない。みんなが動き出してしまうと、スタンプラリーも中止になりかねないからだ。
「……あっちゃん。もしかして、何かあったの?」
「へ?! あ……えっと、なかなか生徒会室来る人いなくって。それで心配になって様子見に来たら、キサちゃんいないんだもん。わたし何の連絡も受けてなかったから、心配しちゃったよー」
「うん。そうだね。それはごめん。でも、本当にどうしたの。顔色が悪いよ」
「……キサちゃん。申し訳ないんだけど、さっきのポイントにいたはずの人がいなくなってたから、大急ぎで行ってあげてもらってもいいかな」
「うん。それならもうすぐ交代だったし大丈夫だけど……秋蘭、一体誰に頼んだのかな。聞いてみる?」
「ううん大丈夫だ。連絡ミスかもしれないし。これは今日の反省点として後で話し合おう。取り敢えず、キサちゃんは大急ぎで行ってもらっていい?」
葵がなるべく焦らないようにそう言うと、「わ、わかった。なんかあったら連絡ね?」彼女はそう言って、音楽室を出て行った。「お騒がせして、申し訳ありませんでした」と、写真館の人たちに謝罪して、葵も音楽室を飛び出す。
そして、必死に走りながら考えた。泣きそうになりながらも走った。
「(大丈夫。殺気はしなかった。殺してはない……はずっ)」
葵は先程の男の言葉を思い出す。何故なら男は、遠回しに「探しに行け」と言っていたから。
「(『ちょっと、消えてもらった』って言ってた。校内で、ちょっと消えられるところは……)」
わからない。合っているかどうかさえ。
「(……でもわたしは、わたしを信じる!)」
葵はとにかく走った。彼を助けるために。
必死に走りながら、無線で声を飛ばす。
「ねえ聞こえる?! 聞こえたら返事をして! お願いッ!!」
……けれど、彼からの返事はなかった。



