すべてはあの花のために③


「――……ッ」


 アキラに連絡を取ろうと思ったが、なるべく事を大きくしたくない。みんなが動き出してしまうと、スタンプラリーも中止になりかねないからだ。


「……あっちゃん。もしかして、何かあったの?」

「へ?! あ……えっと、なかなか生徒会室来る人いなくって。それで心配になって様子見に来たら、キサちゃんいないんだもん。わたし何の連絡も受けてなかったから、心配しちゃったよー」

「うん。そうだね。それはごめん。でも、本当にどうしたの。顔色が悪いよ」

「……キサちゃん。申し訳ないんだけど、さっきのポイントにいたはずの人がいなくなってたから、大急ぎで行ってあげてもらってもいいかな」

「うん。それならもうすぐ交代だったし大丈夫だけど……秋蘭、一体誰に頼んだのかな。聞いてみる?」

「ううん大丈夫だ。連絡ミスかもしれないし。これは今日の反省点として後で話し合おう。取り敢えず、キサちゃんは大急ぎで行ってもらっていい?」


 葵がなるべく焦らないようにそう言うと、「わ、わかった。なんかあったら連絡ね?」彼女はそう言って、音楽室を出て行った。「お騒がせして、申し訳ありませんでした」と、写真館の人たちに謝罪して、葵も音楽室を飛び出す。
 そして、必死に走りながら考えた。泣きそうになりながらも走った。


「(大丈夫。殺気はしなかった。殺してはない……はずっ)」


 葵は先程の男の言葉を思い出す。何故なら男は、遠回しに「探しに行け」と言っていたから。


「(『ちょっと、消えてもらった』って言ってた。校内で、ちょっと消えられるところは……)」


 わからない。合っているかどうかさえ。


「(……でもわたしは、わたしを信じる!)」


 葵はとにかく走った。()を助けるために。
 必死に走りながら、無線で声を飛ばす。


「ねえ聞こえる?! 聞こえたら返事をして! お願いッ!!」


 ……けれど、彼からの返事はなかった。