すべてはあの花のために③


「チカくん、飲み物は何にするー?」

「あー緑茶。温かいのおねがーい」


 そう言われたので、返事をした後、ケトルに水を入れてお湯の準備をする。


「(じゃあ、急須とお茶っ葉と湯飲みと、あとわたしはコーヒーを飲むから、インスタントのコーヒーとカップと……)」


 せっせと準備していたら、後ろから視線を感じたので準備しながら「どうしたのー?」って聞いたら。


「べ、別に、将来こんなんだったらいいなとかっ、そんなこと全然考えてな――」

「(あ。お湯沸いたー)」


 よく言ってる意味がわからなかったので、途中から飲み物の準備に取り掛かった。
 そうして飲み物も準備できたので、二人してもうおやつの時間だけど、遅いお昼ご飯と称してお菓子を食べることに。


「やっぱりチカくんは和菓子が好き?」

「あ? まあそうだな。茶道やってると、自然とそんなんばっか食うから手は伸びるわなー」


 そう言って彼が黙々と食べるのは最中や羊羹、饅頭やおせんべい、どら焼きに金平糖。アキラの幅が広すぎて、若干ビビってしまう葵である。


「そう言うお前は? お前が好きな菓子はこん中にあんのかよ」

「わたし? うーんそうだな。別段これが好きってものはないんだけど」


 そう言って葵は机の上のお菓子を見渡す。


「その県のお菓子とか、国のお菓子とかは、食べてみたいなって思うかな。滅多に食べられるものじゃないし」


 そう言って葵が手を伸ばしたのは八つ橋。


「まあな。でも菓子じゃなくても、好きな食べ物とかあるんじゃねーの?」

「え? うーんどうだろう。そんなこと気にしたことなかったから、わかんないや」


 葵がそう言うと、チカゼは目を少しだけ閉じた。でも。


「そっか。じゃあ、これからお前が好きなもん見つかるといいな」


 ニカッと笑顔でそう言われて。……本当に、そうなればいいなと思った。