「チカくん、飲み物は何にするー?」
「あー緑茶。温かいのおねがーい」
そう言われたので、返事をした後、ケトルに水を入れてお湯の準備をする。
「(じゃあ、急須とお茶っ葉と湯飲みと、あとわたしはコーヒーを飲むから、インスタントのコーヒーとカップと……)」
せっせと準備していたら、後ろから視線を感じたので準備しながら「どうしたのー?」って聞いたら。
「べ、別に、将来こんなんだったらいいなとかっ、そんなこと全然考えてな――」
「(あ。お湯沸いたー)」
よく言ってる意味がわからなかったので、途中から飲み物の準備に取り掛かった。
そうして飲み物も準備できたので、二人してもうおやつの時間だけど、遅いお昼ご飯と称してお菓子を食べることに。
「やっぱりチカくんは和菓子が好き?」
「あ? まあそうだな。茶道やってると、自然とそんなんばっか食うから手は伸びるわなー」
そう言って彼が黙々と食べるのは最中や羊羹、饅頭やおせんべい、どら焼きに金平糖。アキラの幅が広すぎて、若干ビビってしまう葵である。
「そう言うお前は? お前が好きな菓子はこん中にあんのかよ」
「わたし? うーんそうだな。別段これが好きってものはないんだけど」
そう言って葵は机の上のお菓子を見渡す。
「その県のお菓子とか、国のお菓子とかは、食べてみたいなって思うかな。滅多に食べられるものじゃないし」
そう言って葵が手を伸ばしたのは八つ橋。
「まあな。でも菓子じゃなくても、好きな食べ物とかあるんじゃねーの?」
「え? うーんどうだろう。そんなこと気にしたことなかったから、わかんないや」
葵がそう言うと、チカゼは目を少しだけ閉じた。でも。
「そっか。じゃあ、これからお前が好きなもん見つかるといいな」
ニカッと笑顔でそう言われて。……本当に、そうなればいいなと思った。



