「それはさておいてだ! 本当にぷっ、プロポーズはしてねえんだな!?」
「だからそう言ってるじゃん」
何度もそう言って、彼はやっと落ち着いた。それにしても……。
「(なんなのー! 誰! 彼に猫耳チョイスした人!)」
ありがとおーございまあーす!
「チカくん! ご飯食べてないでしょ?」
「は? まあ食ってねえけど」
「そうだと思ったよー。わたしも食べてないから食べよー」
「? いや何をだよ」
そう言って、葵が服に付いているポケットの中から取り出したるは…………。
「じゃじゃーん! ただのチョコレートボール~」
「ドラ〇もんっぽく言うな!」
「あとー、これとー、あれとー、それとー」
「え。お前のポケットもマジで四次元ポケットなのかよ。何でそんなにいろんなもん出てくんだよ」
葵が取り出したのは、大量のお菓子。
「ふ~っ。こんなもんかな?」
「いやいや! 机埋め尽くされたし! 流石にオレもこんなに食えねよ!」
チカゼの言うとおり、机の上には溢れんばかりのお菓子があ~。
「なあ、ほんとにこれどうしたんだよ。お前は本当に四次元ポケットの持ち主だったのかよ」
「そんなわけないじゃ~ん。ポケットに入れてたのは最初のチョコレートボールだけでー、後は、ポッケから出していると見せかけてこのソファーに隠していたのを引っ張り出してたんだよー」
そう言って葵はソファーを捲った。そこには、まだまだ大量に残っているお菓子の山が。
「す、すみませんアオイさん?」
「はいはい! 何ですかチカゼくん!」
「こ、このお菓子って、どうしたんですか……ね?」
「あーそれはですね。誰かさんが持っていたものを回収したら、こんなになっちゃいました」
そう言うと、チカゼは納得したのか、大きなため息をついた。
「ということは、これはオレに処理を手伝えと。そういうことですな」
「その通り! さっすがアキラくんを尊敬しているだけはあるね!」
項垂れていた彼の肩を、パンパンと叩く。
「まあ腹減ってるし。それなりには食ってやるけどよ、全部は無理だぞ」
「いやいや。それは流石に無理だってわかってるから。チカくん何が好きかわからないから、いろいろ出してみただけだよ」
そう葵が笑いながら言うと、「そうっすか」ってほっぺをポリポリしている。そんな、ちょっと照れた顔よりも、彼が動く度動く猫耳に、葵は目がいっちゃってますけどね。
「そんじゃ、食べますか」
そう言って彼が最初に手に取ったのは、やっぱり和菓子だった。



