すべてはあの花のために③


「それはさておいてだ! 本当にぷっ、プロポーズはしてねえんだな!?」

「だからそう言ってるじゃん」


 何度もそう言って、彼はやっと落ち着いた。それにしても……。


「(なんなのー! 誰! 彼に猫耳チョイスした人!)」


 ありがとおーございまあーす!


「チカくん! ご飯食べてないでしょ?」

「は? まあ食ってねえけど」

「そうだと思ったよー。わたしも食べてないから食べよー」

「? いや何をだよ」


 そう言って、葵が服に付いているポケットの中から取り出したるは…………。


「じゃじゃーん! ただのチョコレートボール~」

「ドラ〇もんっぽく言うな!」

「あとー、これとー、あれとー、それとー」

「え。お前のポケットもマジで四次元ポケットなのかよ。何でそんなにいろんなもん出てくんだよ」


 葵が取り出したのは、大量のお菓子。


「ふ~っ。こんなもんかな?」

「いやいや! 机埋め尽くされたし! 流石にオレもこんなに食えねよ!」


 チカゼの言うとおり、机の上には溢れんばかりのお菓子があ~。


「なあ、ほんとにこれどうしたんだよ。お前は本当に四次元ポケットの持ち主だったのかよ」

「そんなわけないじゃ~ん。ポケットに入れてたのは最初のチョコレートボールだけでー、後は、ポッケから出していると見せかけてこのソファーに隠していたのを引っ張り出してたんだよー」


 そう言って葵はソファーを捲った。そこには、まだまだ大量に残っているお菓子の山が。


「す、すみませんアオイさん?」

「はいはい! 何ですかチカゼくん!」

「こ、このお菓子って、どうしたんですか……ね?」

「あーそれはですね。誰かさんが持っていたものを回収したら、こんなになっちゃいました」


 そう言うと、チカゼは納得したのか、大きなため息をついた。


「ということは、これはオレに処理を手伝えと。そういうことですな」

「その通り! さっすがアキラくんを尊敬しているだけはあるね!」


 項垂れていた彼の肩を、パンパンと叩く。


「まあ腹減ってるし。それなりには食ってやるけどよ、全部は無理だぞ」

「いやいや。それは流石に無理だってわかってるから。チカくん何が好きかわからないから、いろいろ出してみただけだよ」


 そう葵が笑いながら言うと、「そうっすか」ってほっぺをポリポリしている。そんな、ちょっと照れた顔よりも、彼が動く度動く猫耳に、葵は目がいっちゃってますけどね。


「そんじゃ、食べますか」


 そう言って彼が最初に手に取ったのは、やっぱり和菓子だった。