二人で笑っていると、今度は茶事を終えたチカゼが生徒会室に入ってくる。
「え? どうしたんだよ。オウリ泣いた?」
彼の目が真っ赤だったのに気づいたんだろう。そう言った彼は大慌てで彼の元へ駆けていき……って言っても、ながぐつをはいたネコに仮装しているので動きにくそうだが。
「どうしたんだオウリ! とうとう襲われたのか!」
違います。ほんとに違うから。
チカゼがそう言うと、オウリが何か閃いたような顔に一瞬なったと思ったら、今度はニヤニヤしながらスマホに文字を打ち、画面をチカゼの前に突き出した。
「……え」
チカゼは呆然とただただ見つめ、固まってしまった。それを見て、オウリはクスッと笑った後、葵のところへ駆けてきて、ほっぺに顔を近づけてきて、ちゅっと音を立てて離れた。
「え」
そして今度は葵が固まる番だった。
「(イマワタシハナニサレタ?)」
そんなことをした彼は、固まった二人を見て、クスッと笑った後、さっさと生徒会室から出て行った。葵が固まっていると、先に金縛りが解けたチカゼがぐっと葵の肩を掴みにかかる。
「お、おいお前! 今からオレが言うことに、正直に答えろよ? な、なあ?!」
最初の威勢はどこへ行ったのか、最後らへんはビクビクしているというか、縋り付いてくるような話し方だ。
「お、お前、オウリに――――ぷろっ、プロポーズしたのかあ!?」
「いやしてないっす」
葵が間髪を入れずあっさりとそう答えると、チカゼは「へ?」ってまた固まっていた。
「いや、だからしてないってばよ」
「でっ、でもお前に、『幸せにしてあげる』って言われたんだって、オウリが、そう……言ってて」
だんだん小さくなる声でそう言ってきた。何を勘違いしているのやら。「それは確かに言った」そう言ったら、「マジかよ!」って、今度は項垂れてしまった。
「でも、それはそういう意味で言ったわけじゃないよ? それはちゃんとオウリくんもわかってる」
「へ? じゃあなんでさっきあんなのわざわざ……」
「チカくん。君はそろそろ、自分がいじられ役だということに気づこう。君はキサちゃんやヒナタくんだけでなく、最近見境なくみんなにいじられている。いじられているということは、人気者ということだ。オメデトウ」
「うれしくねーよ!」
まあそうでしょうけど。ご愁傷様です。



