「(行けないとか行きたくないとか、心配じゃないとか。そういうことじゃなかったんだ)」
安心して「それだったら、用事についていくよ」と言ったけれど、葵は「うーん。それはちょっと駄目なんだ。申し訳ない!」と、手を合わせて謝ってくる。
「そっか。わかった。それじゃあ先に行って待ってるね!」
「うん! そうしてくれたまえ! でも遅くなっちゃうかもしれないから、そうなったらわたしは明日またオウリくんの家に行こうと思うよ!」
「なのでオウリくん家までの地図を書いてくださ~い」と言う葵に、アカネは小さく笑って教えてあげた。
「こんなもんかなー」
「(……ま、迷わず行けるか心配……だけど。ま、何とかなるか)」
ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、今一度言っておきますと、葵は超が付くほどの方向音痴です。
「よし! 頑張る!」
「え。大丈夫? あおいチャンちゃんと来られる?」
「きっと大丈夫だ!」と自信たっぷりに言ってくるので、逆に心配になってしまったアカネであった。
「それじゃあ、あおいチャン。連絡してね? おれもするから」
そう言ったアカネが先に、オウリのところへと駆けていったのを見届けた葵は。
「…………さてと」
その準備をし出した。
❀ ❀ ❀
「(……あおいチャン。君は一体何をするつもりなんだ)」
実はまだ居たアカネは、生徒会室の扉にぴたりと耳をつけ、聴き耳を立てていた。
「(あおいチャンに近づくって決めたんだ。おれも頑張らないと。彼女を……守ってあげないと!)」
そう思っていたアカネの耳に、何か聞き覚えのある音が聞こえ始める。
「(……ん? なんか聞こえるけど……これって、まさか……!)」
確認のため、アカネはゆっくりと扉の隙間から覗く。そこには――――。



