すべてはあの花のために③


「(行けないとか行きたくないとか、心配じゃないとか。そういうことじゃなかったんだ)」


 安心して「それだったら、用事についていくよ」と言ったけれど、葵は「うーん。それはちょっと駄目なんだ。申し訳ない!」と、手を合わせて謝ってくる。


「そっか。わかった。それじゃあ先に行って待ってるね!」

「うん! そうしてくれたまえ! でも遅くなっちゃうかもしれないから、そうなったらわたしは明日またオウリくんの家に行こうと思うよ!」


「なのでオウリくん家までの地図を書いてくださ~い」と言う葵に、アカネは小さく笑って教えてあげた。


「こんなもんかなー」

「(……ま、迷わず行けるか心配……だけど。ま、何とかなるか)」


 ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、今一度言っておきますと、葵は超が付くほどの方向音痴です。


「よし! 頑張る!」

「え。大丈夫? あおいチャンちゃんと来られる?」


「きっと大丈夫だ!」と自信たっぷりに言ってくるので、逆に心配になってしまったアカネであった。



「それじゃあ、あおいチャン。連絡してね? おれもするから」


 そう言ったアカネが先に、オウリのところへと駆けていったのを見届けた葵は。


「…………さてと」


 その準備をし出した。


 ❀ ❀ ❀


「(……あおいチャン。君は一体何をするつもりなんだ)」


 実はまだ居たアカネは、生徒会室の扉にぴたりと耳をつけ、聴き耳を立てていた。


「(あおいチャンに近づくって決めたんだ。おれも頑張らないと。彼女を……守ってあげないと!)」


 そう思っていたアカネの耳に、何か聞き覚えのある音が聞こえ始める。


「(……ん? なんか聞こえるけど……これって、まさか……!)」


 確認のため、アカネはゆっくりと扉の隙間から覗く。そこには――――。