すべてはあの花のために③


 そうこうしていると、スタンプラリーの参加者で無事に辿り着いた人が入ってきて、ぎょっとされてしまった。
 大慌てで答え合わせをして、大正解だったので、賞品を渡してあげた。その間泣いてたオウリはぼうとしていて、「どうする? 警察呼ぶ?」っと言う声が聞こえたので大急ぎで退出してもらった。
 参加者が出ていって、また二人になると、二人は目を合わせて笑った。

 すると、オウリがにこにこしながら文字を打ち出して、どうしたのかな? と思ってると。


〈あーちゃんに聞いてたのにね~
 いつの間にかおれが
 自分の気持ちを確かめてたね~〉


 話を自分から逸らしてしまって、申し訳ないと思っていたのに、彼はすっごいにこにこしてたので、そんなことも言えなくなってしまった。


〈おれはね! 今すっごい幸せ!
 でも確かに話せたらもっと
 幸せかもしれないって
 改めて気づかされたよおー〉


 葵が頷くと、またにっこり笑って打ち出す。
 幸せそうで何よりだ。


〈幸せだけど
 ここの奥にね~?
 冷たいのがあるんだー〉


 そう言って彼は自分の胸に手を当てる。でも、顔は笑顔のままだ。


〈誰にも言えなかった
 多分冷たくなってるっていうのは
 みんな気づいてると思うよ?
 じゃないと話すもんねー普通は

 でも、気づいて欲しくなくって
 心配して欲しくなくって
 隠してたんだあー

 それなのにあーちゃん
 普通に言ってくるんだもん
 おれビックリして
 大泣きしちゃった〉


 楽しそうに画面を見せてくる。
 いや、流石にズバズバ言って申し訳ないとは思ってるよ?


〈でも一緒に冷たいの
 溶かしてくれるって言ってくれたから
 おれも頑張ってみよーかなって思った!

 あーちゃんにおれの声
 聞いて欲しいんだあ♪〉


 前に一度、魘されている彼の声を聞いたことがある。
 でも、そんな声より、彼の楽しそうな声が聞きたい。


〈だから
 そんなことをおれに言ってくれたお礼に
 今度でいいからおれの昔話
 聞いてもらえる?〉


 彼はどれだけ、あの時のことを言い触らしているのやら。


「(ま、そんな嬉しかったなら、わたしも万々歳ですけどね)」


 それに、彼も溶かそう(、、、、)と。自分から動いてみようと、そう言ってくれた。


「うん。そんなの当たり前だよ! みんなにもオウリくんの声を、届かせてあげようね?」


 笑顔でそう言ってあげたら、オウリの顔がどんどん赤くなっていったので、どうしようかと思ったけど〈今のは無しでしょ〉と言われ、葵は首を傾げていた。