葵は、「それは違うよ」とゆっくり首を振る。
「オウリくんのこと、ずっと心配だったと思う。けど、彼がそうして欲しくなかったから、今までみんなは近づけなかったんだよね?」
アカネはこくりと頷く。
「でも、今はオウリくんのこと知ろうとしてる。みんながちゃんと、お互いのことを知ろうとしてくれたこと、わたしはすっごく嬉しいんだ」
ふわりと笑う葵に、アカネは目を見開いた。
「そっか。そうだね。おれらは今、頑張ってるんだ」
「うん。でも、みんなだけじゃダメなんだ。オウリくんも、今頑張らないといけない。だから、一方通行じゃダメなんだ。今のオウリくんの気持ちも、ちゃんとわかってあげないと」
葵がアカネのスマホ画面をツンッと突く。
するとアカネは、こくりと頷いた。
「今は、そっとしておいた方がいいもんね。みんなには一応そう伝えてみるよ。でもみんな、おうりの顔見ないと帰りそうにないけど」
そうしてアカネはみんなに連絡を入れていた。
「アカネくん、君なら何か知ってるんじゃないかな。オウリくんがそうなってしまったこと。オウリくんは、君と同じ技の持ち主だから」
葵が少し不安げにそう聞くと、彼はクスッと笑っていた。
「珍しく自信がなかったの? いつもは知ってるみたいに話すのにい」
クスリと笑いながら聞くアカネに、葵は不安そうな顔を崩さない。
「……詳しくは知らないよ。ほんのちょっとだけ。多分みんなは知らないことだけど。おれが話さなかったから」
そう言って彼は、昔の話をする。
それは、みんなと会う少し前。アカネとオウリが初めて出会った時の話。
「おれが小学校に上がった年にね? みんなより一年早く、おうりと出会ったんだ」



