「うっしゃあー! 完成じゃいこのやろー!」
鏡に映った姿が、すぐに自分だとは理解できなかった。
「お。おれ……?」
見慣れない髪型だったからか、一瞬自分ではないような錯覚に陥る。
「どうどう? ものすごーく格好よくできたのではないかと思うんだけども!」
鏡を持って、すごく嬉しそうにそう言う彼女と、鏡に映る自分を交互に見る。
それは、格好いい人が似合いそうな、ツーブロックのマッシュヘア。
「あ。もしかしてアカネくん、こんな髪型おれには似合わないとか、そんなこと思ってたんでしょー!」
図星だったので、返事はできなかったんだけど。
「アカネくん格好いいもん! 絶対似合うってわたしは思ってた!」
どんがらがっしゃんっ!
彼女の言葉に驚きすぎて――椅子から盛大に転がり落ちた。
可愛いと思われていると思ってたので、嬉しくってつい顔を手で覆ってしまう。
「だ、大丈夫かアカネくん!」
葵は慌てて座り込んでしまったアカネのそばに駆け寄る。
「い、嫌だった? ……嫌い? こんな髪型……」
不安そうな彼女の手を片手で取って、もう片方は顔を隠したままで首を振る。
「あおいチャン。おれのこと、可愛いって思ってたんじゃなかったの……?」
「それはもちろん可愛いって思うこともあるよ? でもアカネくん、前髪とか眼鏡でよく見えないけど、甘い顔立ちのイケメンさんだよ?」
「まあ生徒会のメンバーみんなイケメンさんだよね~」なんてぼそっと言った葵の言葉はアカネには届かなかったのだけれど。
アカネは、そんな葵の言葉に嬉しくなって、「そっか」と。今まで見たことがないような、とびっきりの笑顔で笑った。
「あおいチャン! ダイスキッ!」
その後むぎゅっと抱きつかれた葵は、驚く間もなくアカネから頬にキスされて硬直してしまった。
「よ~し! それじゃああおいチャンのために、おれから話せること話そうかなー!」
そう言って彼は上機嫌で切った髪の毛の片付けをした後、飲み物の準備をし始める。
一方取り残された葵は……。
「(……またアカネくんのファンが増えてしまうぞこれは……)」
赤い顔で硬直したまましばらく、彼の今後の心配と、自分の腕を褒め称えていたのだった。



