最寄りのバス停に着くまで、葵は隣で震えながら小さくなっているオウリの手を握ってあげたり、背中をさすってあげたり。やっぱり時々呼吸がおかしくなったりしてたので、その度に肩を叩いたり耳を引っ張ったり、あとほっぺを伸ばしたりした。
(※後半はただやりたかっただけ)
バス停に着き、葵も送ると言ったのだけど、家が反対方向だったのと学校に間に合わなくなるからと説得され、アカネにお願いすることに。
「(さっきの人は、一体……)」
きっと、みんなも何も知らない。
会った時から、彼は話せなかった。心配を掛けたくなかった、して欲しくなかったって、彼は言っていたから。
「(でも、今が幸せだけど、話せたらもっと幸せになれるかもって。そう言ってた)」
約束したんだ。彼の心の中にある冷たいものを一緒に溶かすんだって。幸せにしてあげるって、そう言ったんだ。
「(ゆっくりって言ったけど。もう、あんな彼は見たくない)」
葵は一旦家へ急ぐ。
「(今度話をしてくれるって言ってたけど……どうしてだろう。彼が、学校に来ないような気がしてならないのは)」
まずは今日来られるかどうか。
そして次の日。その次の日も。
「(多分今日来られなかったら、しばらく会えない気がする)」
葵は、力強く踏み出す。
「(まずは、あの人に話をしないと。それから続いて聞いてみよう。……絶対に知ってる。従兄弟である、彼なら)」
帰宅した葵は学校へ行く準備を急ぐ。今は彼のことで頭がいっぱいだったが、シントと擦れ違った時には「録画ありがとう!」ときちんと言えたのでよかった。遠くの方で「お嬢様! 何故電話してくれないのです!」と聞こえた気がしたが、それどころではなかったのでスルー。
シャワーに入った時、少しだけ薄くなってしまったように感じる赤い花を指ですっとなぞる。付けられてまだ一日しか経っていないので、流石にそんなことはないだろうが。
「(なんか隠すのが当たり前のようになってるから、消えてしまったら逆にちょっと寂しい…………って)」
なっ、何を考えとんじゃい!
今は違うことに集中!
「(どうしよう。学校に行っても、彼が来てるかなんてわかんないし……)」
早く行こうと思ったけど、学年が違うオウリには普段生徒会室でしか会わない。
「(連絡……しても多分返ってこないだろうから、取り敢えず午前中は普通に授業を受けてみよう。お昼休みにでも、チカくんかヒナタくんに聞いてみるか)」
葵は鞄を持って、家を飛び出す。
本当に、今回ばかりは自分の勘が外れていて欲しいと、そう願いながら。



