「あ。オウリくん……」
いつの間に戻ってきていたのだろう。彼は小さく笑って、葵が結ぼうとしていたミサンガを結んでくれた。
結んでくれたミサンガをじっと見つめた後オウリと目が合うと、彼は苦笑い。どうしたのかなって思ってたら、彼の両手が葵の頬に伸びてきて、涙のあとを拭ってくれた。
「ん。……あ、ありがとう。オウリくん」
彼の、葵を見つめる視線がとてもやわらかいものだったので、葵は恥ずかしくて目を逸らしたのだが、オウリは葵の頬から手を離さなかった。
そんな葵を見てオウリはクスッと笑った後、顔を近づけて葵のまだ涙が残っている目元にキスをくれる。
「お。おうり、くん……っ?」
彼はそのまま葵に腕を回して、ぎゅっと抱き締めてくる。
「――――っ。……――――っ。……ッ」
スースーと息が漏れるような、そんな音が耳に何とか届く。
「(オウリくん。もしかして話そうとしてくれてる……?)」
でも、なんだかつらそうだった。ここに来てから少し様子がおかしいのと、何か関係があるのだろうか。
彼の腕は、体は、少しだけ震えているような気がした。それが、きっと葵に伝わってしまわないように、ぎゅっと抱き締めているんだろうけれど……。
「(なんだかわたしに縋ってるようだよ)」
葵は、彼が安心してくれるように、ゆっくりと背中を撫でてあげた。
初めは驚いて体を硬くしたけれど、ゆっくり葵が何度も撫でてやると、ゆっくり力を抜いてくれた。
「大丈夫だよ? 焦らなくていいよ? ゆっくり行こう? ……ここに。何か、あるのかな」
「……!」
また体を硬くしてしまった。
そんなつもりで言ったわけじゃないんだけど。
「また、ゆっくり聞かせてね? オウリくんの助けに、わたしがいつでもなってあげるからね?」
本当は、今すぐ聞きたい。
彼の不安を取り除いてあげたい。
それでも、ゆっくり時間もかけてあげたいとも思う。
彼は、返事の代わりにこくりと頷き、力強く葵の体を抱き締めた。



