「……みんなを、どうか。よろしくお願いします……」
葵はそう言って、彼女に深く礼をした。
「……どういうこと」
「わたしにはもう、時間がありません。だからもし、わたしがいなくなった時。みんなの傍にいてあげてください。みんなを、支えてあげてください。……みんなを、守ってあげてください……っ」
葵は、頭を上げなかった。
彼女がわかったと言うまで――絶対に上げなかった。
「……わかったわ。そうならないことを祈ってるけど、もし。そうなったら必ず」
「はいっ。よろしく。おねがいします……っ」
葵は顔を上げて、涙を拭う。
今日は泣きすぎだ。あ。もう今日じゃなくなってるけど。
「あと、このことは誰にも言わないでください。もちろんみんなにも、理事長にも」
「それじゃあ、ちょっと家に連絡を取ってきます」と、葵はスマホを握り締めて病室を出て行った。
葵のその言葉に、彼女が返事をしなかったことにも気付かず――……。
「……はあ。どうしよう……」
外の空気が吸いたくなってしまったので、結局病院の外まで出てきてしまった。
「ここでシントにメールをしたら、きっと怒られる。また出番を減らせたこと。だがしかし、わたしはお昼のことを忘れたわけではない! わたしは学んだのだ! やっぱりメールにしておこう! シントはもうこの巻は出さない!」
葵はそう思って、今日は病院に泊まって早朝に帰る旨を認めたメールを一通送っておいた。
「(今は……深夜の1時か。なんだか目が覚めちゃったな)」
((それはソウデショ。六時間くらい寝てタンダカラ))
「(そうなんだよねー。明日は学校なのにー)」
葵は花壇に腰掛けて、ぼーっとしていた。
「(はあ。……どうしよう。二日続けて家に……部屋に帰れてない)」
((一旦家、帰ったジャナイ))
「(やること、できてないんだ)」
((……そうダッタネ))
「(今日の朝帰るでしょ? でもすぐ学校行かないといけないし……)」
((時間かかるかラネ。中途半端にはしておけナイシ))



