すべてはあの花のために③


「……みんなを、どうか。よろしくお願いします……」


 葵はそう言って、彼女に深く礼をした。


「……どういうこと」

「わたしにはもう、時間がありません。だからもし、わたしがいなくなった時。みんなの傍にいてあげてください。みんなを、支えてあげてください。……みんなを、守ってあげてください……っ」


 葵は、頭を上げなかった。
 彼女がわかったと言うまで――絶対に上げなかった。


「……わかったわ。そうならないことを祈ってるけど、もし。そうなったら必ず」

「はいっ。よろしく。おねがいします……っ」


 葵は顔を上げて、涙を拭う。
 今日は泣きすぎだ。あ。もう今日じゃなくなってるけど。


「あと、このことは誰にも言わないでください。もちろんみんなにも、理事長にも」


「それじゃあ、ちょっと家に連絡を取ってきます」と、葵はスマホを握り締めて病室を出て行った。

 葵のその言葉に、彼女が返事をしなかったことにも気付かず――……。



「……はあ。どうしよう……」


 外の空気が吸いたくなってしまったので、結局病院の外まで出てきてしまった。


「ここでシントにメールをしたら、きっと怒られる。また出番を減らせたこと。だがしかし、わたしはお昼のことを忘れたわけではない! わたしは学んだのだ! やっぱりメールにしておこう! シントはもうこの巻は出さない!」


 葵はそう思って、今日は病院に泊まって早朝に帰る旨を認めたメールを一通送っておいた。


「(今は……深夜の1時か。なんだか目が覚めちゃったな)」

((それはソウデショ。六時間くらい寝てタンダカラ))

「(そうなんだよねー。明日は学校なのにー)」


 葵は花壇に腰掛けて、ぼーっとしていた。


「(はあ。……どうしよう。二日続けて家に……部屋に帰れてない)」

((一旦家、帰ったジャナイ))

「(やること、できてないんだ)」

((……そうダッタネ))

「(今日の朝帰るでしょ? でもすぐ学校行かないといけないし……)」

((時間かかるかラネ。中途半端にはしておけナイシ))