すべてはあの花のために③


「――はっ! お○松〇ん録画するの忘れてたっ!」


 ガバッと起き上がると、そこは橙色の電気が点いた真っ白な部屋。


「(……あれ? ここはどこ? わたしはあおい)」


 目を覚ましてすぐ、葵は目を丸くする。ベッドへ俯せになって寝ていた、アキラ、カナデ、アカネ、オウリ、チカゼ。壁際に椅子を並べ、壁にもたれかかるように眠る、ツバサ、ヒナタ、キサの姿があったから。


「……わたし、どうしたんだっけ」

「過呼吸で倒れちゃったのよ」


 返事が返ってくると思わなかった葵は、目の前のベッドを起こして微笑んでいる先生を凝視する。


「……そう、ですか」


 そういえばスマホはどこにやったっけと思ったら、すぐに枕元に置いてあったのを見つける。


「(よかった。パスつけておいて)」


 アキラには電源を落としたところを見られていただろう。そう思っていると、また先生から声が掛かる。


「葵さん……いえ道明寺さん。少し、私とお話してくれるかしら」

「――!」


『あおい』としか名乗っていないにも関わらず、彼女は何故葵の名字を知っているのだろうか。


「……嫌だと言ったら?」

「そう。でも逃がさないわ。私には生徒を守る義務がある」

「――――」


 目の前の彼女は、完全に敵視している目でこちらを見ていた。

 葵は、みんなを起こしてしまわないようゆっくりとベッドを降り、彼女の方へと歩み寄る。彼女の領域には踏み込まなかった。その様子に先生はクスッと笑った後、やわらかく微笑む。


「そんなに警戒しなくてもいいのに。ちょっと聞きたいことがあっただけよ?」


 さっきとは明らかに態度が違う。
 だからこそ葵は用心して、距離は空けたままにした。


「……何でしょうか」

「あら。嫌われちゃったかしら。……体調はもう大丈夫?」


 本当に心配してくれているようだった。


「はい。ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした」

「いいえ。みんなも心配してたから、あとでお礼言ってあげてね。こんな時間になっても目が覚めないあなたのこと、付きっ切りでみていたんだから」


 そういえば、今何時だろう――そう思って病室の時計を見ると、今まさに日付が変わろうとしていた。


「……わたしたちがここに来たのって夕方じゃ……」

「よく眠っていたわ。みんなも頑張って起きてたんだけど、途中でギブアップしたみたい。今日は他に何か疲れるようなことしてたの? 10時ぐらいには死んだように寝てしまったわよ」


 わー。悪魔さんとかオカマさんに文句を言われそー。