すべてはあの花のために③


 ――パンッ!


「――!」


 こうやって、手を叩いてくれるのは一人しかいない。


「……あきら。くん……」


 葵は咄嗟に握っていたスマホの電源を落とす。それにアキラは眉を顰めたが、深くは聞いてこなかった。
 けれどアキラの出した大きな音で、みんなの視線はこちらに向いていた。徐々に心配そうな視線が集まる。


「……葵。どうした。何があった」


 ……何がそんなに、おかしなことがあるんだ?
 そんなの、わからないようにちゃんと隠して――――。


「アオイちゃん!」


 葵は今まで緊張していたせいか、ふっと足の力が抜けた。隣にいたアキラと近くにいたカナデに支えられる。


「葵。大丈夫か。わかるか」


 ははっ。一体、何言ってるんだ、アキラくんは。
 そんなの、わかるに決まって……。


「アオイちゃん! ゆっくり! ゆっくり息して!」


 カナデくんも。何、言ってるんだよ。
 ちゃんと。息だって、してる……からっ。


「過呼吸だ! センセ! ナースコール!」


 遠くでなんか、チカくんが喋ってるなー。
 あれま。先生もナースコールまでしてるし。
 大丈夫だよー。初めてのことじゃないし。こんなのすぐ治まるから――――。


「――葵!」
「アオイちゃん!」


 病室にも関わらず、大きな声で叫んだみんなの声は、気を失った葵の耳には届かなかった。