そのあとシオンは行くところに大分遅刻していたらしく、「これは大変だ!」とわざとらしく自分の額をペチンと叩き、「また来ます」と慌ただしく病室を出て行った。
そのあと、みんなは本当に嬉しそうに先生とこれまでの話をしていた。先生にとって、このことはとってもつらいことだっただろうに、元生徒たちにそう感じさせないような大人の雰囲気に、葵は舌を巻いた。
そんな話をしているのを、葵は病室の窓側へ行って、日が傾きはじめている空を見上げていた。
「(……病院、か)」
そして葵が、自分の手の平を閉じたり開いたり、ぼうっと考え事をしていたまさに、その時だった。
「――――……ッ?!」
にやりとした、あのどこまでも纏わり付いてくるような視線。
葵は、誰にも気づかれないように、ぎゅっと自分の手を握り締める。
「(……ッ、どこだ。一体どこから……っ!)」
気持ち悪さと戦いながら、ゆっくり目を閉じて集中する。
「(……っ。この感じ、絶対文化祭に来てた奴……っ!)」
生ぬるく、纏わり付く感じが一向に拭えない。
「――⁉︎」
続けてマナーモードにしていたスマホに、通知が届く。
「(……なんで。このタイミングで……)」
カタカタと震える手を押さえながら、葵は画面を見る。そこには、知らないアドレスから一通メールが届いていた。
震える手で画面をスライドさせ、受信ボックスを開く。
〈サア
イツ
恋ニ落チル
ノカナ?〉
「――――」
なんで。どうして、そんなことを知ってるの。
……気持ち悪い。きもちわるい。きもち、わるい……ッ。



