すべてはあの花のために③


 そのあとシオンは行くところに大分遅刻していたらしく、「これは大変だ!」とわざとらしく自分の額をペチンと叩き、「また来ます」と慌ただしく病室を出て行った。

 そのあと、みんなは本当に嬉しそうに先生とこれまでの話をしていた。先生にとって、このことはとってもつらいことだっただろうに、元生徒たちにそう感じさせないような大人の雰囲気に、葵は舌を巻いた。


 そんな話をしているのを、葵は病室の窓側へ行って、日が傾きはじめている空を見上げていた。


「(……病院、か)」


 そして葵が、自分の手の平を閉じたり開いたり、ぼうっと考え事をしていたまさに、その時だった。


「――――……ッ?!」


 にやりとした、あのどこまでも纏わり付いてくるような視線。
 葵は、誰にも気づかれないように、ぎゅっと自分の手を握り締める。


「(……ッ、どこだ。一体どこから……っ!)」


 気持ち悪さと戦いながら、ゆっくり目を閉じて集中する。


「(……っ。この感じ、絶対文化祭に来てた奴……っ!)」


 生ぬるく、纏わり付く感じが一向に拭えない。


「――⁉︎」


 続けてマナーモードにしていたスマホに、通知が届く。


「(……なんで。このタイミングで……)」


 カタカタと震える手を押さえながら、葵は画面を見る。そこには、知らないアドレスから一通メールが届いていた。

 震える手で画面をスライドさせ、受信ボックスを開く。


〈サア
 イツ
 恋ニ落チル
 ノカナ?〉



「――――」


 なんで。どうして、そんなことを知ってるの。
 ……気持ち悪い。きもちわるい。きもち、わるい……ッ。