すべてはあの花のために③


「オウリくんは、どうしてその仮装にしたの?」


 めちゃくちゃ持って帰りたいんですけどと、そう思いながら聞いてみると、彼はきょとんとした後。


〈あーちゃんがおれのこと
 ウサギさんって言うから〉


 と教えてくれた。……あれ。口から漏れてた?
「え? だからなの?」と聞くと、コクコクと頷かれてしまった。


「(え。どうしよう。めちゃくちゃ嬉しいんですけど。やっぱり持って帰っていいですかね?)」


 そう思っていたら、〈それはやめて〉と返ってきた。
 やはりだいぶ、口からいろいろ漏れてるらしい。気をつけよう。


〈あーちゃんはどうしてその衣装なの?〉と聞かれたので、「何かわかってるの?」って聞いたら、ちゃんと三つ答えてくれてビックリした。


「(ほんと、ツバサくんといいオウリくんといい。彼らはほんとによく気づくなあ)」


 葵は感心した後、ツバサにした話をオウリにもしてあげた。


「だからね? 最後が必ず幸せになるから、素敵な話だなって、そう思ったんだよ?」


 葵がそう言うと、彼は真面目な顔をしたまま葵から視線を外さない。そんな瞳で見つめられたら、心の中が全て見透かされそうだ。


「(ま、そんなことはさせないけど)」


 葵がにっこりと笑うと、オウリはため息をつく。どうやら諦めてくれたようだった。


〈最後が幸せになるのもならいっぱいあるよ?
 なのにどうしてこれを選んだの?〉


 けれどツバサはそこで終わったのに、彼は深く聞いてこようとする。


「わたしがね、この話が大好きだから」


 そう言うと、また〈どうして?〉と聞いてくる。どうやらはぐらかされてはくれないみたいだ。


「なんて言っていいかわかんないんだけど、つらいことや苦しいこと、悲しいことを人っていろいろ経験するじゃない?」

「(こくこく)」

「そういうのがね、あっても必ず幸せになるんだって思うと、そういうのも乗り越えていけそうな気がしない?」

「(……こくり)」

「だからね? もしそんなことになったとしても、『よし! 大丈夫だ! これを頑張ればきっと楽しいこと、嬉しいこと、幸せなこと、自分を笑顔にしてくれることがたくさん待ってるんだ』……そう思えて、何でも頑張れる気がするの」

「…………」

「だから……そうだな。この童話があるから、わたしはここまで強くなれたんじゃないかと、そう思ってるよ?」