「オウリくんは、どうしてその仮装にしたの?」
めちゃくちゃ持って帰りたいんですけどと、そう思いながら聞いてみると、彼はきょとんとした後。
〈あーちゃんがおれのこと
ウサギさんって言うから〉
と教えてくれた。……あれ。口から漏れてた?
「え? だからなの?」と聞くと、コクコクと頷かれてしまった。
「(え。どうしよう。めちゃくちゃ嬉しいんですけど。やっぱり持って帰っていいですかね?)」
そう思っていたら、〈それはやめて〉と返ってきた。
やはりだいぶ、口からいろいろ漏れてるらしい。気をつけよう。
〈あーちゃんはどうしてその衣装なの?〉と聞かれたので、「何かわかってるの?」って聞いたら、ちゃんと三つ答えてくれてビックリした。
「(ほんと、ツバサくんといいオウリくんといい。彼らはほんとによく気づくなあ)」
葵は感心した後、ツバサにした話をオウリにもしてあげた。
「だからね? 最後が必ず幸せになるから、素敵な話だなって、そう思ったんだよ?」
葵がそう言うと、彼は真面目な顔をしたまま葵から視線を外さない。そんな瞳で見つめられたら、心の中が全て見透かされそうだ。
「(ま、そんなことはさせないけど)」
葵がにっこりと笑うと、オウリはため息をつく。どうやら諦めてくれたようだった。
〈最後が幸せになるのもならいっぱいあるよ?
なのにどうしてこれを選んだの?〉
けれどツバサはそこで終わったのに、彼は深く聞いてこようとする。
「わたしがね、この話が大好きだから」
そう言うと、また〈どうして?〉と聞いてくる。どうやらはぐらかされてはくれないみたいだ。
「なんて言っていいかわかんないんだけど、つらいことや苦しいこと、悲しいことを人っていろいろ経験するじゃない?」
「(こくこく)」
「そういうのがね、あっても必ず幸せになるんだって思うと、そういうのも乗り越えていけそうな気がしない?」
「(……こくり)」
「だからね? もしそんなことになったとしても、『よし! 大丈夫だ! これを頑張ればきっと楽しいこと、嬉しいこと、幸せなこと、自分を笑顔にしてくれることがたくさん待ってるんだ』……そう思えて、何でも頑張れる気がするの」
「…………」
「だから……そうだな。この童話があるから、わたしはここまで強くなれたんじゃないかと、そう思ってるよ?」



