「……なって。みたい……」
今でも涙を流す葵から小さく零れたその言葉は、なんとか目の前のユズに届くだけ。その葵から漏れた必死の言葉に、ユズはゆっくりと頷いてあげる。涙を流す葵につられ、ユズも一緒に涙を流していた。
「……恋に。落ちて。みたい……」
「……っ。うん。だいじょうぶ。だよっ?」
ユズはゆっくり葵の頭を撫でてやる。瞬きをする度に、綺麗な涙が落ちていく。
「……なっても。いい。のかな……」
「うんっ。もちろんっ」
「……こんな。わたしっ。でも……?」
「……っ、うんっ」
「愚かで。醜くて。……花を。枯らしてしまうような。……っ、こんな。わたし、でも……いい。のかな」
「……? ……うん。もちろんだ。でもっ、そんなことない。あおいちゃんは人を幸せにできる人だから」
「だってさっき、あたしは幸せだった。あおいちゃんのおかげだよ」そう言ってくれるユズに、「そ。かっ」と少しだけ泣きながら笑った。
「……わたし。幸せに、なってみたい。です」
キサとユズは嬉しそうに笑って、葵をぎゅーっと抱き締めてくれた。
遠くで見ていた男子陣は、いろんな顔をしていた。
葵を取られたと思ったのか、眉間に皺を寄せたり、悲しそうな顔をしたり、悔しそうな顔をしたり。
でもその中には、目を細めていたり、苦笑いしてたり、温かく見守っていたり、心配そうに見つめてくれていたりしている人もいた。
あっという間にバス停に到着。
ユズと打ち解けた葵は、その後キサと一緒に昔の話を聞いていた。
「ユズちゃん、キサちゃん、ありがとう。なんかスッキリした」
「あっちゃんが幸せならそれが一番だ!」
「そうだそうだー!」
そうこうしていると、向こうからバスが来るのが見える。
「そうだ、あおいちゃん」
「ん? なーにユズちゃん」
どうしたんだろうと思ったら、急に手を握られた。
「あたしね、あおいちゃんなら女の子でも大歓迎だからね」
「へ?」
ほっぺたに彼女らしい可愛いキスが落とされて、葵は驚く間もなく固まった。
「へへ。なんか変なスイッチ入っちゃった」
「ゆ、ユズちゃん……?」
キサはもちろん、よく見ると面白いくらい男子陣も固まっていた。



