すべてはあの花のために③


 いつの間にかユズは腕を離していて、葵の顔をずっと見ていた。葵は、ユズの話を聞いている間も、ずっと涙を流していた。


「(……わたしが大好きな童話と。おんなじだ……)」


 つらいことがあっても、その先には必ず幸せが訪れる。

 ……今でも十分幸せだ。これ以上ないくらい。
 こんなことが訪れるなんて、思ってもみなかったのだから。


 ここが、幸せの終わりではないのかな。
 まだ、この先には幸せがあるのかな。

 怪盗さんにも、同じようなことを言われた。キサにも。そして、目の前のユズにも。
 こんなにも自分の幸せを願ってくれている人がいてくれて。すごく嬉しい。


 ……そうか。自分が信じないとダメなのか。
 怪盗さんの言葉も、結局はできないと思ってた。

 でも、自分もそうなりたいと思わないと、なれないものなのか、幸せって。


 ……信じるの、怖いな。
 何が怖いかって、それができなかった時だ。

 自分も苦しむ。
 それに、きっと好いてくれる人たちも。


 大好きなみんなのことを苦しませたくないと、そう思っていたのは、それこそ独り善がりか。
 怪盗さんが言ってた。犠牲で幸せなんてこないと。

 先の見えている未来。
 真っ暗で、暗闇しかない未来。
 それでも幸せに憧れてしまうのは、やっぱり自分がそうなりたいから。


 決まってるから?
 これは運命?

 ――ううん。違う。

 自分も、そうあるべきだって思ってる。
 そう、勝手に決めつけちゃってる。


 ……こんな自分でも、幸せになれるかな。
 こんな自分が、幸せを願ってもいいのかな――――……。