いつの間にかユズは腕を離していて、葵の顔をずっと見ていた。葵は、ユズの話を聞いている間も、ずっと涙を流していた。
「(……わたしが大好きな童話と。おんなじだ……)」
つらいことがあっても、その先には必ず幸せが訪れる。
……今でも十分幸せだ。これ以上ないくらい。
こんなことが訪れるなんて、思ってもみなかったのだから。
ここが、幸せの終わりではないのかな。
まだ、この先には幸せがあるのかな。
怪盗さんにも、同じようなことを言われた。キサにも。そして、目の前のユズにも。
こんなにも自分の幸せを願ってくれている人がいてくれて。すごく嬉しい。
……そうか。自分が信じないとダメなのか。
怪盗さんの言葉も、結局はできないと思ってた。
でも、自分もそうなりたいと思わないと、なれないものなのか、幸せって。
……信じるの、怖いな。
何が怖いかって、それができなかった時だ。
自分も苦しむ。
それに、きっと好いてくれる人たちも。
大好きなみんなのことを苦しませたくないと、そう思っていたのは、それこそ独り善がりか。
怪盗さんが言ってた。犠牲で幸せなんてこないと。
先の見えている未来。
真っ暗で、暗闇しかない未来。
それでも幸せに憧れてしまうのは、やっぱり自分がそうなりたいから。
決まってるから?
これは運命?
――ううん。違う。
自分も、そうあるべきだって思ってる。
そう、勝手に決めつけちゃってる。
……こんな自分でも、幸せになれるかな。
こんな自分が、幸せを願ってもいいのかな――――……。



