「あおいちゃん。人を好きになったことがある?」
「え? ……えっと。ない、です……」
「だったらこれから楽しみだね!」
「どういうこと……?」
「だって人を好きになるって、本当にすごいことなんだよ。その人のことを考えるだけで、嬉しくなったり、恥ずかしくなったり、悲しくなったり、苦しくなったり。それに、体が勝手に動いちゃう時だってあるんだ!」
「え? ……でもそれって、友達にもなるでしょう?」
「それが比じゃないんだよ! 好きな人になると、超嬉しくなったり、超沈んじゃったり! 勝手に体が動いて抱き締めたり、終いにはちゅーしてしまうという!」
「ちゅう⁉︎」
「そのぐらい、すごい存在なんだ。そんな人を見つけたなら、きっと今でもすごいあおいちゃんは、飛びかかっていきそうだね!」
ユズは楽しそうに笑うが、葵は苦しそうな顔をするだけ。
「……もしかしてあおいちゃん、自分が嫌い?」
「うん。すっごく」
低い声。鋭い目つき。
ユズの問いにも食い気味で躊躇わない。
そんな葵に、キサもユズも驚いて一瞬止まってしまった。
「で、でもさ、そんなあおいちゃんのことを、好いてくれる人はいるでしょう? あたしも一瞬であおいちゃんの虜になっちゃったよ」
「…………」
「あっちゃん……」
そして何よりも鋭い雰囲気。返事をしようとしない葵。
そんな彼女は、どこを見ているのか。何を考えているのかもわからない。
「……うんっ。そんなに自分のことが嫌いなら、まずは好きになることから始めないとだね! じゃないと好きな人なんてできないさ~」
「え?」
ユズがそう言うと、やっと焦点が戻ってくる。
「だって、自分を大事にできないなら、相手のことも大事にできないよ」
「そ、そんなことない!」
「じゃあさ、自分の『ここは好きだなー』とか、そういうとこはある?」
「…………強い、とこ?」
葵がそう言うと、ユズとキサは思わずずっこけてしまった。「うん。まあ今はそれでいいや」と続ける。
「あおいちゃんが好きなところなんだから、他の人も好きになってくれると思わない? それともあおいちゃんは、自分を好いてくれる人なんていないって思ってる?」
葵は、そう言われて、緩く首を振る。
だって、好いてくれる人はいてくれるから。
「でも、自分は好きになる資格なんてないって。そう思ってる。違う?」
そういうことを伝えていたキサの方を見るけれど、「あたしは言ってないよ?」と返ってきた。
「きさちゃんには、あおいちゃんがわざとと思うくらい、自分のことに関して鈍感だって聞いただけ。でも確かに、ちゃんとみんなから言われないと、ほんとのとこの気持ちってわからないよね」
「……わたし。は……」
「どうしてそこまで気づかないのか。好きって気持ちから逃げようとしているのか。あたしにはわからないけど……あおいちゃんは、人を好きになりたい?」
葵は歩く速度を落とし、ゆっくりと止まる。
ユズとキサは葵の方を振り返る。葵は俯いていた顔をゆっくり上げ、二人に視線を合わせた。



