そう思っていると、二人が笑顔でこちらにやってくる。
「ユズちゃんごめんね? わたしがもっと前からカナデくんを躾ておけば、こんなことにはならなかったのに……」
「アオイちゃん?! 躾ってどういうこと⁉︎」
「だってカナデくん大きなワンコだし。時々ちっさいけど」
「??」
意味がわからないと、カナデは首を傾げてしまう。今のそれがちっさいワンコモードだとは気付かずに。
みんなはわからなかったみたいだけど、「確かに~!」とただ一人、ユズだけはどうやらわかったよう。流石だ。
葵たちは、次の場所にも行かなくてはいけなかったので、ここでユズとはお別れである。
ユズは、来たバス停まで送ってくれるみたいで、そこまで一緒に歩いていた。
「あおいちゃん。さっきはありがとうっ」
女子陣は、男子陣に遅れて歩いている。その時にユズが葵にお礼を言ってくれたのだけれど。
「へ? 何がですか?」
「同い年なんだから敬語はやめてよ~」
結構強めに背中を叩かれて、一瞬息ができなかった。
「かなくんに言ってくれたんでしょう? あたしが振られて落ち込んでるから、慰めてこいとか何とか……?」
そう言っている最中に葵が首を大きく振っていたので、最後の方は疑問系に。
「何も言ってないよ?」
「嘘ばっかり!」
「まあまあ柚子落ち着きなって」
「カナデくんなんて言ってた?」
「えっと、言葉が足りてないとか何とか」
「そんなこと言ってたのか……」
ユズがそう答えると、葵は「うん! だからそれ!」と返す。
「わたし、本当にそれしか言ってないよ? 後は技掛けてたし!」
二人は、十分躾……ううん、みっちり体に叩き込まれてるわと思った。
「カナデくんはちゃんと、あの頃よりは確実に成長できたんだよ」
葵の眩しい笑顔に、ユズは一瞬息が詰まる。
「だから、少しでもそれがユズちゃんに伝わればいいなと思ったんだ。なのにあのワンコと来たら! それだけで伝わるかっての! イラッと来たから手が出ちゃったよ~」
てへへと、葵は頭を掻きながら答えた。
「きさちゃん、あなたの言うとおりだった」
「でしょう。この子はそういう子なのよ」
何やら二人が話し始めてしまって、葵は置いてけぼりに。
「これって、あたしも救ってもらっちゃったって、そういうこと?」
「あんたがそう思っているならそういうことだねえ」
ユズは「あちゃ~」っと言いながら顔を隠しているけど、その声はなんだか嬉しそうだった。
「……よしっ! あたしもここであおいちゃんのために、恋愛講義をしておこうかな!」
「よ! 頑張れ柚子!」
応援する相手が違うような気もするが、まあ放っておこうか。



