すべてはあの花のために③


 そう思っていると、二人が笑顔でこちらにやってくる。


「ユズちゃんごめんね? わたしがもっと前からカナデくんを躾ておけば、こんなことにはならなかったのに……」

「アオイちゃん?! 躾ってどういうこと⁉︎」

「だってカナデくん大きなワンコだし。時々ちっさいけど」

「??」


 意味がわからないと、カナデは首を傾げてしまう。今のそれがちっさいワンコモードだとは気付かずに。
 みんなはわからなかったみたいだけど、「確かに~!」とただ一人、ユズだけはどうやらわかったよう。流石だ。


 葵たちは、次の場所にも行かなくてはいけなかったので、ここでユズとはお別れである。
 ユズは、来たバス停まで送ってくれるみたいで、そこまで一緒に歩いていた。


「あおいちゃん。さっきはありがとうっ」


 女子陣は、男子陣に遅れて歩いている。その時にユズが葵にお礼を言ってくれたのだけれど。


「へ? 何がですか?」

「同い年なんだから敬語はやめてよ~」


 結構強めに背中を叩かれて、一瞬息ができなかった。


「かなくんに言ってくれたんでしょう? あたしが振られて落ち込んでるから、慰めてこいとか何とか……?」


 そう言っている最中に葵が首を大きく振っていたので、最後の方は疑問系に。


「何も言ってないよ?」

「嘘ばっかり!」

「まあまあ柚子落ち着きなって」

「カナデくんなんて言ってた?」

「えっと、言葉が足りてないとか何とか」

「そんなこと言ってたのか……」


 ユズがそう答えると、葵は「うん! だからそれ!」と返す。


「わたし、本当にそれしか言ってないよ? 後は技掛けてたし!」


 二人は、十分躾……ううん、みっちり体に叩き込まれてるわと思った。


「カナデくんはちゃんと、あの頃よりは確実に成長できたんだよ」


 葵の眩しい笑顔に、ユズは一瞬息が詰まる。


「だから、少しでもそれがユズちゃんに伝わればいいなと思ったんだ。なのにあのワンコと来たら! それだけで伝わるかっての! イラッと来たから手が出ちゃったよ~」


 てへへと、葵は頭を掻きながら答えた。


「きさちゃん、あなたの言うとおりだった」

「でしょう。この子はそういう子なのよ」


 何やら二人が話し始めてしまって、葵は置いてけぼりに。


「これって、あたしも救ってもらっちゃったって、そういうこと?」

「あんたがそう思っているならそういうことだねえ」


 ユズは「あちゃ~」っと言いながら顔を隠しているけど、その声はなんだか嬉しそうだった。


「……よしっ! あたしもここであおいちゃんのために、恋愛講義をしておこうかな!」

「よ! 頑張れ柚子!」


 応援する相手が違うような気もするが、まあ放っておこうか。