すべてはあの花のために③


「でも、開けたら大事にそれを取り出してくれてね? 一緒に抱えてくれるんだよ」


 だから惚れちゃったんだって、あまりにも嬉しそうに言うもんだから、完敗だと思った。そしてそれ以上に、こんな笑顔を見られたことが、自分も嬉しくてつい笑顔になる。


「そっか。それはよかったね!」


 カナデは頷いた後、少しだけ真面目な顔になる。


「俺がユズちゃんにそれを返したのは、君が大切だからだよ」


 そんなことを言われるなんて思ってもいなかったユズは、目を開いたまま固まる。


「それのおかげで、ユズちゃんのおかげで、俺はこうして笑っていられた。新しい恋だってできた」


 カナデは、ユズの顔を覗き込むように見つめてきた後、にっこり笑う。


「俺はもう十分守ってもらってきたから、今度は持ち主のユズちゃんを守ってくれるように。俺の大好きだった彼女を守ってもらえるように。だから、君に返しに来たんだ」


 そう言ってくれるカナデの声が、前のとっても優しかった頃の彼の声と重なって聞こえて、ユズはまたぽろぽろと涙が溢れてきてしまう。


「前の弱虫で、繊細な俺じゃあもうないんだって。これからは変わるよ。だから、これからも俺の大事な友達として、仲良くしてくださいな」


 カナデは、やっぱり袖で彼女の涙を拭ってあげるけど、その後頭に、ぽんと手を置いた。


「俺を好きだって言ってくれてありがとう。俺、まだそう思ってもらえてると思ってなくて、すごく嬉しかった。でも俺は進んじゃったから。だから、ユズちゃんもどうか進んでください」


 ユズは、ただただ頷いて涙を流した。
 カナデはそんな彼女の涙が止まるまで、ずっと頭をぽんぽんと、やさしく撫でてあげていた。



 葵は、そんな二人の様子を、遠くから見つめていた。


「(うん。今度はちゃんと言えたみたいだっ)」


 そう思ってふと視線を感じたので振り返ってみると、今度はアキラがじーっとこちらを見ていた。葵と目が合うと、ぷいっとそっぽを向いてしまったけれど。


 彼にも、きちんと返事をしないといけない。自分の気持ちを、正直に。
 ……勘違い、してしまわないように。