「でも、開けたら大事にそれを取り出してくれてね? 一緒に抱えてくれるんだよ」
だから惚れちゃったんだって、あまりにも嬉しそうに言うもんだから、完敗だと思った。そしてそれ以上に、こんな笑顔を見られたことが、自分も嬉しくてつい笑顔になる。
「そっか。それはよかったね!」
カナデは頷いた後、少しだけ真面目な顔になる。
「俺がユズちゃんにそれを返したのは、君が大切だからだよ」
そんなことを言われるなんて思ってもいなかったユズは、目を開いたまま固まる。
「それのおかげで、ユズちゃんのおかげで、俺はこうして笑っていられた。新しい恋だってできた」
カナデは、ユズの顔を覗き込むように見つめてきた後、にっこり笑う。
「俺はもう十分守ってもらってきたから、今度は持ち主のユズちゃんを守ってくれるように。俺の大好きだった彼女を守ってもらえるように。だから、君に返しに来たんだ」
そう言ってくれるカナデの声が、前のとっても優しかった頃の彼の声と重なって聞こえて、ユズはまたぽろぽろと涙が溢れてきてしまう。
「前の弱虫で、繊細な俺じゃあもうないんだって。これからは変わるよ。だから、これからも俺の大事な友達として、仲良くしてくださいな」
カナデは、やっぱり袖で彼女の涙を拭ってあげるけど、その後頭に、ぽんと手を置いた。
「俺を好きだって言ってくれてありがとう。俺、まだそう思ってもらえてると思ってなくて、すごく嬉しかった。でも俺は進んじゃったから。だから、ユズちゃんもどうか進んでください」
ユズは、ただただ頷いて涙を流した。
カナデはそんな彼女の涙が止まるまで、ずっと頭をぽんぽんと、やさしく撫でてあげていた。
葵は、そんな二人の様子を、遠くから見つめていた。
「(うん。今度はちゃんと言えたみたいだっ)」
そう思ってふと視線を感じたので振り返ってみると、今度はアキラがじーっとこちらを見ていた。葵と目が合うと、ぷいっとそっぽを向いてしまったけれど。
彼にも、きちんと返事をしないといけない。自分の気持ちを、正直に。
……勘違い、してしまわないように。



