「それで? 何お話しするー?」
〈嫌かもしれないんだけど
どんな視線だった?〉
そう聞いてきた彼の言葉で、思い出してしまった。
気持ちが、悪く、なる。
葵はとっさに自分の身体を抱き締めた。するとオウリがそんな状態の葵を抱き締めてくる。片手で背中をさすってくれている。
もう片方は文字を打っていて、〈ごめん忘れて?〉と言ってくれるけれど、葵は首を振った。彼の背中を叩き「大丈夫だよ」と、話そうとする。
そしたらオウリが葵の口の前に手を突き出して、待ったをかけた。
〈あーちゃんがそんなになってるのに
無理矢理は聞きたくないっ!〉
彼の方がつらそうな顔で、そう伝えてくれた。
葵は心配してくれるオウリに、ふわりと笑いかける。
「ありがとう。じゃあ、少しスマホ借りてもいい?」
葵の意図に気付いたオウリは心配そうな顔をしたが、葵がふわりと笑ったままだったので、ゆっくりと頷いた。
〈嘲笑うような
馬鹿にされてるような
そんな感じ
生ぬるくて
纏わり付いてきて
ずっと付き纏ってこられた感じがしたんだ
……すごく。気持ち悪かった〉
葵が頑張って打っている間も、オウリは画面を覗きながら背をずっとさすってくれた。「ありがとう」と言うと、こちらこそと笑顔で返してくれた。
〈もしかしたらあーちゃんは
違う目的でも狙われてるのかも〉
葵が彼に返したスマホで、そんなことを言ってくる。
「そう、なのかな」
第一、視線だけでそこまでの相手の感情を読み取れるものではない。はっきりその人を見たわけでもないし。
二人は、それっきり黙り込んでしまった。だからもうこんな話はやめようと、葵はオウリにずっと聞きたかったことを尋ねてみることに。



