すべてはあの花のために③


「それで? 何お話しするー?」

〈嫌かもしれないんだけど
 どんな視線だった?〉


 そう聞いてきた彼の言葉で、思い出してしまった。
 気持ちが、悪く、なる。

 葵はとっさに自分の身体を抱き締めた。するとオウリがそんな状態の葵を抱き締めてくる。片手で背中をさすってくれている。
 もう片方は文字を打っていて、〈ごめん忘れて?〉と言ってくれるけれど、葵は首を振った。彼の背中を叩き「大丈夫だよ」と、話そうとする。
 そしたらオウリが葵の口の前に手を突き出して、待ったをかけた。


〈あーちゃんがそんなになってるのに
 無理矢理は聞きたくないっ!〉


 彼の方がつらそうな顔で、そう伝えてくれた。
 葵は心配してくれるオウリに、ふわりと笑いかける。


「ありがとう。じゃあ、少しスマホ借りてもいい?」


 葵の意図に気付いたオウリは心配そうな顔をしたが、葵がふわりと笑ったままだったので、ゆっくりと頷いた。


〈嘲笑うような
 馬鹿にされてるような
 そんな感じ

 生ぬるくて
 纏わり付いてきて
 ずっと付き纏ってこられた感じがしたんだ

 ……すごく。気持ち悪かった〉


 葵が頑張って打っている間も、オウリは画面を覗きながら背をずっとさすってくれた。「ありがとう」と言うと、こちらこそと笑顔で返してくれた。


〈もしかしたらあーちゃんは
 違う目的でも狙われてるのかも〉


 葵が彼に返したスマホで、そんなことを言ってくる。


「そう、なのかな」


 第一、視線だけでそこまでの相手の感情を読み取れるものではない。はっきりその人を見たわけでもないし。
 二人は、それっきり黙り込んでしまった。だからもうこんな話はやめようと、葵はオウリにずっと聞きたかったことを尋ねてみることに。