すべてはあの花のために③


 けれど、だんだん彼女の顔が歪んでいってしまう。


「……前に、進んじゃったって。思ったんだ」

「ユズちゃん?」

「あんた、やっぱり……」


 急にテンションが低くなってしまったユズに、驚きを隠せない。


「さっき、言ったの。『今も、あの時からずっと、好きなんだ』って」

「柚子、あんたまだ圭撫のこと……」


 彼女は、ロザリオをぎゅっと握り締める。


「『もう、俺は前に進んだから』って。苦笑いしてた。だから……ああ、もうあたしは彼の隣を歩けないんだって。悲しいわけじゃないよ? 前に進んでくれて、本当に嬉しい! ただ、寂しいなって。そう、思ったんだ。これが返ってきたってことは、あたしはもう……いなくても大丈夫なんだって、言われたような気がして」


 ユズは前屈みになって、涙を必死に堪えている。
 そんな彼女の背中を、キサがやさしく撫でている。

 ――その時。葵は何を思ったのか、勢いよく立ち上がった。


「え? あっちゃん?」

「ど、どうしたの? あおいちゃん」


 葵の背中は、何故か今から戦場に出向くような勇ましい背中だった。


「こんな可愛いユズちゃんを泣かせるなんて! わたしが絶対に許せないっ!」


「月に代わってお仕置きして来るっ!」と言い残し、葵はカナデの元に駆け出していった。