「こっちに来てからも、ずっと心配だったの。大好きだったの。あんまり離れたところにいけなかったのは、やっぱり離れがたかったからかな」
だから、噂でかなくんが元気だっていうのがわかった時、本当に涙が出るほど嬉しかった。
何度も会いたいって思った。
でも、戻るのも怖かった。
かなくんやみんなじゃない。周りの人たちが。
そんな人たちを見て、かなくんが壊れちゃうんじゃないかとも思った。
実際のところかなくんは超が付くほどの繊細だから。
全部自分のせいだって思っちゃうから、あたしは離れることを選んだの。
だから、会いに行けない代わりに一度だけ、人伝で彼に贈り物をしたの。噂で担任の先生がわたしと同じような目に遭ってしまったって言うのを聞いて、……彼を守ってくれますようにって。
「もちろん、あたしってことは伏せてもらった。でもすぐにわかったみたい。ずっと、あたしが肌身離さず持っていた物だから」
そう言って彼女は、首から提げていたものを服の中から引っ張り出す。
そこから現れたのは、カナデがいつも肌身離さず身に着けていたネックレス――【ロザリオ】だった。
「――――」
「そして、かなくんはこれを返しに来てくれた。もう大丈夫だよって。あたしがいなくても大丈夫だよって」
彼女は昔のことを話していたから。
キサはその話に夢中になっていたから。
一瞬、葵の様子が変わったことに気づかなかった。
「あたしがここまで元気になれたのは、かなくんが今までずっと好きだったから! またいつか会えた時に、あたしが元気じゃないと彼はまた自分を責めちゃうから。あたしは、大好きだった彼のために、ここまで立ち直れたのだ!」
ユズが、どや顔で言ってのけた。
それにキサと、平静を取り戻した葵が手を叩いて彼女を絶賛する。
「すごいねキサちゃん! これが愛の力ってやつなんだね!」
「その通りだあっちゃん! 人は愛で明るくも暗くもなれるのだ!」
「その通りだ! わかったかいあおいちゃん!」
何故か一気に彼女との距離が縮んだ気がした。
「はいユズ先生! キサ先生! わたし、とっても感動致しました!」
「ふむ。それならよろしい」
「さっきよかったって言ったのは、かなくんが事情を知らない誰かに、このことを話すことができたからなんだ。前に進めたんだなって」
彼女は本当に嬉しそうだった。まるで自分のことのように。



