すべてはあの花のために③


「はじめまして道明寺葵ちゃん! ……あおいちゃんって、呼んでもいい?」


 彼女はそう言いながら、二人が座っているベンチへと腰掛けてくる。男子メンバーは、カナデも入れてまた遊びはじめていた。


「かなくんからさっき聞いたの。あたしのことはどうぞユズって呼んで!」


 満面の笑顔があまりにも綺麗で。葵は直視できなかった。


「はい。ユズさん」

「なんか距離あるぞ! 呼び捨てにしなさい! できないならせめて『ちゃん』にしなさい!」


 あまりの勢いの強さに葵は圧倒されて、「じゃ、じゃあユズちゃん?」と言わざるを得なかった。
 でもそう言うと、本当に嬉しそうに「やった! 名前呼んでくれたー!」なんて喜ぶもんだから、葵の方こそ涙が出そうなほど嬉しくなる。


「きさちゃんも久し振りだね!」

「ほんとほんと! 柚子も元気そうでよかったよー」


 そういえば彼女は酷い目に遭ったことを思い出す。
 すると葵の表情でわかってしまったのか、ユズはにっこり笑ってくれた。


「あおいちゃんも聞いたんだね~」

「は、はい。そうなんです。……ごめんなさい」


 そう言うと、ユズは何故か「よかったあ」と零した。続けて「確かにあのことは思い出しただけでもつらい」と、苦しそうに話す。

 嫌なことをたくさんされたこと。
 事情を知った人からは、心配そうに見られていたこと。
 でもその目の奥にあったのは嫌悪感。心配なんか上辺だけ。


「――! そんなことっ!」

「あっちゃん」


 否定しようとした葵を、キサが止める。
 だからようやく理解した。それが、本当の話だと。


「本当はあたしも、かなくんから離れたくなかった。……大好きだったから」

「ユズちゃん……」

「あっちゃん。柚子は、圭撫に近寄るなって組の人たちに言われてたせいよりも、まわりが自分を見てくる目がつらかったから、目の前から消えたの」


 信じられなかった。
 こんな苦しい思いをした人を、どうしてそんな目で見ることができるのか。


「離れてからもずっと、かなくんが大好きだった。悪い奴に襲われてないか、すごい心配だったよ」

「柚子。つらかったら話さなくても……」


 そう言うキサに、葵も頷いた。
 でも、何故かユズはケロッとしている。


「へ? ああ、あのことはつらかったけど、大丈夫だよ。それを今からあおいちゃんに話してあげようと思ったんだあー」


 二人はお互い目を合わして、首を傾げるばかり。


「え? 恋バナしてたんじゃないの?」

「あ~なるほど。……そうなのよ柚子。この恋愛未経験者のあっちゃんに、恋愛というものをあたしが頑張って教えてあげてたのだよ」


「そうでしょ~? なんか、ちらっと聞こえたのがそんな話だったからー、あたしも混ざりたかったの」なんてユズは言ってくる。


「まあまあ、ここからがいい話だから」

「よ! 待ってました!」


 何が楽しくなるのだろうかと思っていたら、彼女が話し出してくれたのは、カナデへの想い。