そのあとカナデがみんなに何かを話した後、カナデと彼女以外はこちらに戻ってくる。葵たちは自販機でそれぞれ飲み物を買って「二人はどんな会話をしてるんだろうね」とか、他愛ない会話をしていた。
男共はそのあと勝手に遊びはじめたので、今はキサと二人並んでベンチへ。
「あっちゃん大丈夫?」
「え? 何かあった?」
笑顔で返したつもりだけれど、上手く笑えていなかったのか、キサの顔はどこか不安げ。
「さっきから様子がおかしい。多分みんなも気づいてる。だからあたしに聞いてみてくれって」
「キサちゃん、目でみんなと会話できるんだね」
「……ーーーー、ないけどね」
ぼそっと何かを呟いたようだが、残念ながら小さすぎて葵には聞こえなかった。
「もしかして、カナデを取られたみたいで寂しい?」
「うーん。どうなんだろう」
これはきっと、彼だけじゃない。
みんなだから、こんなになってしまったのだろう。
「あっちゃん、カナデが好き?」
「それは好きだけど……彼は友達だもん」
葵は、買ってきたコーンポタージュを一口飲み込む。
「見当違いなこと言ったらごめんね」
「キサちゃん?」
「今は一緒でも、未来はどうなるかわからない。進学するかもしれない。就職するかもしれない。留学するかも。結婚だってするかもしれない。それはこの先必ずしも起こること。それでもあたしたちは、これからもずっと一緒だよ? それは絶対に、変わらないこと」
「ははっ。うん。そうだね」
葵からは、乾いた笑いしか出ない。
「あっちゃんとは友達だから。それはみんなも一緒だよ」
「……ほんとに、そうかな」
今度は葵の呟きがあまりにも小さすぎて、キサには届かない。
「でもねあっちゃん。恋愛ってなったら、話が変わるんだ」
キサは葵の方を向いて真剣に言ってくれるが、葵は両手で握っている缶に視線を落としているだけ。
「人を好きになるのが苦しくもあるのは、誰か一人と結ばれるからだ。あっちゃんはそれが怖い? みんなを好きでいたい?」
今はそのことで落ち込んでるわけではないけれど、彼女の講義にはきちんと答えたいと思った。



