すべてはあの花のために③


「……仕事、ねえ」


 ぼそっとそう零したシントは、きっとするのであろう化粧道具などの準備をした後、葵が投げていった荷物の整理をした。

 真っ白のストールをハンガーに掛け、真っ赤なハイビスカスを丁寧に透明のケースへ、そして新聞紙に包まれている真っ白な薔薇を、一輪挿しに生けておく。

 ただただそうすることが、まるで当たり前のように。