すべてはあの花のために③


〈ひーくんと何してたの!〉

「(ひーくん?! 何それ! そんな可愛い名前で呼んでるの?!)」


 何も言わなかったせいか、オウリはぷんぷんと怒ってしまった。


「お、オウリくん? 一体ひーくんに何を言われたんだい?」


 ちょっと面白かったので使ってみた。そうしたら、猛スピードで文字を打ち出したのでどうしたのかと覗いてみたら。


〈あいついい匂いする
 って言ってた!〉

「えっと、オウリくん。それは多分わたしの服の柔軟剤の匂いだと思うよ?」


 どうしてそんなことで怒っているのかわからなかったけれど、葵はそう言って袖を彼の鼻の前に持って行ってあげる。彼は最初戸惑っていたけれど、確認したかったのかクンクンと嗅いでいた。


「(……襲う自信がある)」


 そうこうしていると、彼はにっこり笑った。〈ほんとだね~〉という文字もつけて。
 納得してくれてよかったと、ほんわかした空気が流れ――――。


〈いや違うから!
 だからどうしてひーくんは
 あーちゃんの匂いを嗅いだの!〉


 と、慌てた様子で文字を打つオウリ。
 なんだなんだ~? またそんなこと?


「いやさっきね? トーマさんから電話が掛かってきたのですよ」

「?」


 何故いきなりそんな話に? と、オウリは首を傾げている。


「それで電話に出たら、ヒナタくんがぴったりくっついてきて」

「!?」

「多分話の内容聞きたかっただけだと思う。耳を近づけてきただけだから」


 そう言うと、オウリはまた『なんだあ~そんなことだったのか~』という顔にな――――。


〈それ絶対服の匂いだけじゃないから!〉


 って大急ぎで教えてくれた。


「え? そうなの? どこ?」


 葵は普通にオウリに聞き返した。そんな返事が返ってくると思ってなかったオウリはというと、少し顔を赤くして、もじもじしている。「どうしたの?」って聞いたら、〈そ、それはいいから! おれとお話しよ!〉て無理矢理会話を逸らされてしまった。


「(なんだったんだろう。まあ、全然いいんだけど)」


 実は今使っている柔軟剤がお気に入りだったので、ちょっと嬉しかったりする葵である。