〈ひーくんと何してたの!〉
「(ひーくん?! 何それ! そんな可愛い名前で呼んでるの?!)」
何も言わなかったせいか、オウリはぷんぷんと怒ってしまった。
「お、オウリくん? 一体ひーくんに何を言われたんだい?」
ちょっと面白かったので使ってみた。そうしたら、猛スピードで文字を打ち出したのでどうしたのかと覗いてみたら。
〈あいついい匂いする
って言ってた!〉
「えっと、オウリくん。それは多分わたしの服の柔軟剤の匂いだと思うよ?」
どうしてそんなことで怒っているのかわからなかったけれど、葵はそう言って袖を彼の鼻の前に持って行ってあげる。彼は最初戸惑っていたけれど、確認したかったのかクンクンと嗅いでいた。
「(……襲う自信がある)」
そうこうしていると、彼はにっこり笑った。〈ほんとだね~〉という文字もつけて。
納得してくれてよかったと、ほんわかした空気が流れ――――。
〈いや違うから!
だからどうしてひーくんは
あーちゃんの匂いを嗅いだの!〉
と、慌てた様子で文字を打つオウリ。
なんだなんだ~? またそんなこと?
「いやさっきね? トーマさんから電話が掛かってきたのですよ」
「?」
何故いきなりそんな話に? と、オウリは首を傾げている。
「それで電話に出たら、ヒナタくんがぴったりくっついてきて」
「!?」
「多分話の内容聞きたかっただけだと思う。耳を近づけてきただけだから」
そう言うと、オウリはまた『なんだあ~そんなことだったのか~』という顔にな――――。
〈それ絶対服の匂いだけじゃないから!〉
って大急ぎで教えてくれた。
「え? そうなの? どこ?」
葵は普通にオウリに聞き返した。そんな返事が返ってくると思ってなかったオウリはというと、少し顔を赤くして、もじもじしている。「どうしたの?」って聞いたら、〈そ、それはいいから! おれとお話しよ!〉て無理矢理会話を逸らされてしまった。
「(なんだったんだろう。まあ、全然いいんだけど)」
実は今使っている柔軟剤がお気に入りだったので、ちょっと嬉しかったりする葵である。



