「それで? どこまで行ってくるの?」
「うん? 隣町まで~」
葵は荷物の整理と、着ていく服を準備し始める。
「もう準備するの? まだもう少し俺と喋ってよー」
「駅から全力疾走で帰ってきたから汗かいちゃって。一回シャワー浴びたいんだよね」
着替えを持ってさっさと部屋から出て行こうとすると。
「……葵。ちょっと待って」
ドアノブに手を触れた瞬間、シントは葵の背後からドアに手を突いて逃がさない。
「シント。わたし今すごい汗臭いんだけど」
「なんで走ったの」
シントは未だに自分の方を向いてくれない葵の、左側の髪を耳に掛けながら聞いてくる。
「……多分だけど、みんなが追いかけてきたんだ。わたしさっき言い逃げしちゃったから、それについて聞きたかったんだと思うけど、本当に大したことじゃないんだよ」
「だから早くバスルームに行かせて」と、ドアノブをまわすが、シントに押さえつけられていて動かない。
そんな様子の葵の髪を左側から後ろにかき上げ、シントは見えた首筋に顔を埋めてくる。
「……ほんとだ。ちょっと汗のにおいする」
葵の首筋から耳の裏側に甘えるように顔を寄せてきて、啄むようなキスを落としてくる。
「……ねえ。もっと構ってよ」
「……っ。や、やめなさいシントっ」
力が抜けてしまう葵は、シントを押し返そうにもやわらかく手をドアに押しつけられてままならない。
「だーめ。もうちょっとだけ」
押さえつけていない方の手は、いつの間にかブレザーのボタンを外し、ブラウスのボタンも外しにかかってきていた。
「ちょっ。……シント! だめ!」
葵の全力拒否にシントは残念そうな顔をして、最後にこめかみにキスを落とした後、ゆっくり離れていく。
「はーい。それじゃあベッドで待ってる」
「仕事をしなさい仕事を‼︎」
真っ赤な顔をしながら、逃げるように葵はシャワーを浴びに行ったのだった。



