すべてはあの花のために③


「ぐえーッ!」


 本日二度目。襟を掴まれて、部屋の中に引き摺り込まれてしまった。


「折角出られたんだからさ、こっちは杜真くんより喋りたいわけよ」


 担いでベッドに放り投げられた葵は、顔面からベッドへダイブ。


「ぶふっ! ……は。鼻が。ただでさえそんなに高くない鼻が……」


 只今、一生懸命摩ってます。


「連絡するならメールじゃなくて電話にしてよ。ただでさえそんなに出てこないレアキャラなのに、メールだったら【一通メールを送った】で済んじゃうじゃん。お前は俺を今巻出さないつもりだったの?」

「そんなのわたしのせいじゃないし。作者の気分だし」


 シントは肩をぐるぐる回しながら、葵が座っているベッドへ腰掛ける。


「アキもさ、電話してきてくれたのに俺との会話描かれなかったんだけど。ほんと、出られてよかったわ~」

「今巻キク先生はまだ一言も喋ってないよ」


 シントは「よっしゃ!」とガッツポーズ。なんて低レベルな争いか。


「理事長はちょっと出たけど、やっぱりキャラ濃いねあの人。一言喋っただけで十分だわ」

「理事長に負けるとか、めっちゃ腹立つ……」


 シントは葵の枕をぶん殴っている。


「トーマさんも電話だけだから、よかったじゃん?」

「まあそうだけどさーあー」


 やっぱりサブキャラ感が否めないのか、シントはしゅん……と寂しそうに。


「ていうかシント仕事は? だからと思ってメールにしたんだけど」

「葵よりも優先するべき仕事なんてないし」


 自信満々に言ってくる、彼もどうやら吹っ切れてしまったようだ。


「ちゃんと仕事しないなら減俸です」

「お任せくださいませお嬢様」

「……アキラくんとは何話してたの?」

「え? ああ、今日は今からまたどっか行くから、この作品出るならこの三時間が勝負だって言われた」

「あ。そ、そうなんだ……」


 どうやらアキラのアドバイスによって、彼は仕事を中断してまで葵の部屋で待っていたらしい。
 なんという執念。そしてなんという兄思い。